地震や台風などの災害時に、ひらがなだらけの警報が流れることがあります。
今回は、やさしい日本語のデメリット・メリットは何か?
特徴や災害時の注意点について紹介します。
やさしい日本語のデメリット・メリットは?
やさしい日本語のデメリットやメリットはなんでしょうか?
やさしい日本語とは何か?:分かりやすい日本語
やさしい日本語とは次のようなものです。
【がいこくじん の みなさんへ】
たいふう19ごう が 12にち~13にち に にしにほん~きたにほんの ちかくに きそうです。 たいふう19ごう は おおきくて とても つよいです。 き を つけて ください。
(↓よんで ください)https://t.co/47Pb7NhZu6 https://t.co/kHlFxQUAnG pic.twitter.com/tFVzDtGTMa— NHKニュース (@nhk_news) October 9, 2019
「がいこくじんのみなさんへ」と書かれていることからも分かる通り、その目的は外国人に対するアナウンスです。
通常、私たち日本人が使う日本語よりも簡単な言葉で表現されており、外国人にも「わかりやすい日本語」になるよう工夫して書かれた文章のことです。
やさしい日本語の必要性は?:災害時に外国人を取り残させない
「やさしい日本語」への関心が高まった理由は1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災だと言われています。
現在日本には約200万人の外国人が生活をしており、その出身国は150カ国以上にのぼります。
東京だけでなく、大阪府周辺にも多くの外国人が住んでおり地震の被害に遭うことになりました。
自分のことで精一杯で外国人のための対応はどうしても後回しになりがちです。
地震大国に住む私たち日本人ですら生活が一変するような出来事に見舞われている中、地震に不慣れだった外国人たちにとっては情報を適切に得ることもままならない状況が続きました。
「外国人」と聞くとどうしても私たちは「英語」のイメージが直感的に浮かびます。
しかし英語を母語としていたり、英語を第2外国語として習得・利用できる人たちばかりではありません。
国立国語研究所によると母語・最もよくできる言語は
中国語 | 36% |
ポルトガル語 | 12% |
フィリピン語 | 9% |
朝鮮語 | 8% |
英語 | 8% |
インドネシア語 | 4% |
スペイン語 | 3% |
ベトナム語 | 3% |
という結果でした。
日本語も英語も不自由な外国人は多く、必要な情報を受け取ることができませんでした。
そこで開発されたのが「やさしい日本語」でした。
日本で生活する外国人の種類は多く、すべての言語に対応することよりも、日本で生活する中で少しずつ馴染んできている日本語を使うほうが結果的に近道です。
簡単なわかりやすい言葉だけで、理解できる文章を作ろうということになりました。
今では災害時だけでなく、ニュースなども「外国人にわかりやすいように」という配慮から「やさしい日本語」での発信が行われ、徐々に普及していっています。
国立国語研究所によると、母語以外で日常生活に困らないレベルで使える言語として日本語だと答えた人が6割を超えています。
日本語 | 61.7% |
英語 | 36.2% |
スペイン語 | 2.8% |
ポルトガル語 | 2.5% |
中国語 | 1.7% |
災害時の対応として、多言語への翻訳は現実的に対応不可能な言語が出てきてしまう可能性があり、さらに市役所などの窓口担当者がそれらの言語全てに対応することは不可能です。
情報伝達としても複数言語を同時発信するよりも、一つの言語のみで情報を伝えられる方が遅れもなくスムーズです。
やさしい日本語のデメリットは?:情報の欠落や基準
やさしい日本語のデメリットは、通常の日本語を単純に漢字をあまり使わないように表現したものではないことから生じます。
使う単語数を少なく簡潔にしたものがやさしい日本語であり、
- やさしいの基準が明確ではない
- 日本語能力試験が基準としてふさわしくない
- 具体化するために情報が抜ける
といったものが挙げられます。
やさしいの基準が明確ではない
やさしい日本語にはガイドラインが存在していますが、基本としては「やさしさ」にあると言われています。
日本語能力試験の級を基準にしていますが、日本語能力試験の出題レベルがどの程度なのかを明確に理解している必要があります。
また、難易度の高い言葉が混ざって変換されていると、意味のわからない言葉の周辺を飛ばしてしまいやすくなります。
意味のわかる言葉だけをかいつまんだとしても、間違って理解することのないように全体のバランスを意識しなければいけません。
日本語能力試験が基準としてふさわしくない
日本語能力試験の出題基準自体が明確に線引きされているとは言い切れません。
およそ日本語能力試験の3級程度の1500語が目安とされています。
例えば3級と4級で、ひらがな表記をした際にも線引きがされている言葉もあればそうでないものもあります。
具体的には「かける」という言葉について、
4級 | 3級 |
メガネをかける | 壁に絵をかける |
電話をかける | 椅子に腰をかける |
親に心配をかける |
という違いがあります。
わかりやすい日本語では漢字が使われないので、単純に「日本語能力試験の3級程度」を基準に言葉を変換してしまうと、結局知らない言葉が登場して漢字も使われていないため文脈から意味を推測しなければならなくなります。
具体化するために情報が抜ける
やさしい日本語では、ただ単純にひらがなをメインにした文章に置き換えるのではありません。
そのニュースや災害情報が伝えたいことは何か?要点・本質部分だけを具体的な行動を表す言葉に置き換えていきます。
その言い換え・置き換えには翻訳者の意思が入ります。
特に災害時には言葉を置き換えた結果、理解ができなければ行動に移すことができなくなります。
また、具体化するにあたって忠実に言い換えるよりもわかりやすい言葉で要点だけに集中するため、情報が抜け落ちやすくなります。
例えば
「避難経路を確保してください」
を言い換える時に「ドアを開けてください」という言葉だけにしてしまうと、「なんのためにドアを開けるのか?」という理由が分からなくなってしまいます。
目的が明確でないことで、何故しなければならないのかが分からなくなり、行動に移されない可能性が出てきてしまいます。
やさしい日本語のメリットは?:情報を的確に伝える
やさしい日本語のメリットは
- 情報を的確に伝えられる
- 翻訳時間短縮と均一化
の2つです。
情報を的確に伝えられる
やさしい日本語は、通常のニュースや災害情報をひらがなに変換したものではありません。
要点を見つけ出してできる限りシンプルで分かりやすく、日本語がマスターできていなくてもある程度の日本語知識で理解できるように変換されています。
情報を発信する側も複数の言語に翻訳する手間が省けるため、災害時の緊急を要する情報発信にも無駄が省けます。
翻訳時間短縮と均一化
やさしい日本語は文節数などもわかりやすさを重視して作られています。
そのため、通常の日本語の文章から他言語に翻訳する時に比べて、翻訳に要する時間が短くて済みます。
また、使われている言葉もシンプルなため、さまざまな言語に翻訳した際にも表現や意味の違いが起こりにくい傾向にあると言えます。
やさしい日本語の特徴や災害時の効果や注意点は?
やさしい日本語の特徴や、災害時の効果や注意点はどのようなものがあるでしょうか?
やさしい日本語の特徴は?:文節や漢字の使用数などのルール
日本人にとっての英検のように、「日本語能力試験」というものが存在します。
やさしい日本語では、日本語能力試験で比較的やさしい部類に入る3級程度の語彙や文法を使って作られています。
やさしい日本語は、日本語で書かれたり話されているニュースや災害情報などを日本語に慣れていない外国人でも理解しやすい言葉に言い換えたものです。
言い換えのためのガイドライン・マニュアルが用意されています。
大まかには
- 1文の文字数は24字程度
- 1文の文節数は6文節程度
- 1文に含まれる漢字は3文字程度
- 方向を示す表し方は「〜へ」で統一
- 可能を表す表現は「〜することができる」で統一
- 指示する表現は「〜してください」で統一
- 主語を表す表現は「〜は」で統一
といったものがあり、学力レベルとしては小学校の3年生程度までで習う表現や漢字で構成されています。
また、やさしい日本語では漢字をあまり使わない傾向にあるため、ひらがなだけでは音が同じで区別できない表現が発生しやすいです。
そのため独自に助詞などで使う文字を限定して区別していたりします。
さらに詳しくは
- 一文を短くする
- 連体修飾は避ける
- 文末表現は簡単に
- 二重否定は避ける
- やさしい語彙に言い換える
- 災害と関連する国はそのまま使い、言い換え表現を併記
- カタカナは避ける
- ルビを打つ
- 分かち書き(スペースで文字を区切る)
災害時の語句一覧として次のようなページがあります。
やさしい日本語の災害時の効果や注意点は?
やさしい日本語は日常的にも使われ始めていますが、1番の使われ時であり効果を最大限に発揮するのが災害発生時です。
災害時にはいかに早く情報を取得し、適切な対応をできるかどうかが生死を分けることになります。
情報伝達として国や地方自治体などが外国語に翻訳して発信するよりも、日本語の範疇で済む「やさしい日本語」への変換の方が時間が短くて済みます。
そして、災害時には特に聞き慣れない言葉であっても、重要なものが多数あります。
知っていないと対応が遅れることになってしまうため、やさしい日本語においてもそのままの表現がなされます。
例えば「消防車」や「余震」などです。
消防車<火を 消す 車> |
余震<あとから 来る 地震> |
避難場所<みんなが 逃げる ところ> |
炊き出し<温かい 食べ物を 作って 配る> |
津波<とても 高い 波> |
といったように< >の中に説明書きが加えられつつ、そのままの言葉が使われます。
徐々に言葉を理解して覚えていけるようにすることで、後々の災害時にはよりスムーズに対応できるようになってもらうという意図があります。
まとめ
・やさしい日本語とは何か?:分かりやすい日本語
通常、私たち日本人が使う日本語よりも簡単な言葉で表現されており、外国人にも「わかりやすい日本語」になるよう工夫して書かれた文章のことです。
・やさしい日本語の必要性は?:災害時に外国人を取り残させない
「やさしい日本語」への関心が高まった理由は1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災だと言われています。
・やさしい日本語のデメリットは?:情報の欠落や基準
- やさしいの基準が明確ではない
- 日本語能力試験が基準としてふさわしくない
- 具体化するために情報が抜ける
・やさしい日本語のメリットは?:情報を的確に伝える
- 情報を的確に伝えられる
- 翻訳時間短縮と均一化
・やさしい日本語の特徴は?:文節や漢字の使用数などのルール
- 1文の文字数は24字程度
- 1文の文節数は6文節程度
- 1文に含まれる漢字は3文字程度
- 方向を示す表し方は「〜へ」で統一
- 可能を表す表現は「〜することができる」で統一
- 指示する表現は「〜してください」で統一
- 主語を表す表現は「〜は」で統一
・やさしい日本語の災害時の効果や注意点は?
災害に関する言葉は、知っていないと対応が遅れることになってしまうため、やさしい日本語においてもそのままの表現がなされます。
いつもたくさんのコメントありがとうございます。他にも様々な情報がありましたら、またコメント欄に書いてくださるとうれしいです。
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