三島由紀夫 PR

「豊饒の海・春の雪」のネタバレあらすじ!簡単にわかりやすく解釈を解説!

記事内に商品プロモーションを含む場合があります

2020年は三島由紀夫が亡くなってから、ちょうど50年です。

今回は、三島由紀夫の最後の長編小説としても知られる豊饒の海の第1巻・春の雪のネタバレあらすじを紹介します。

また、春の雪の解説と解釈についても見ていきましょう。

「豊饒の海 春の雪」ネタバレあらすじ

豊饒の海は三島由紀夫の遺作となった長編小説で、全4部に分かれており、春の雪はその第1部です。

この作品は一言でいえば貴族の息子と娘の悲恋の物語です。

明治が終わり大正へと時代が変わっていく頃、優雅な貴族社会で悩みながら生きている若者が、恋を通して破滅へ向かって行きます。

そこへ仏教や哲学の考えを織り交ぜることで、ただの恋愛物語ではない幻想的な作品になっています。

主人公清顕とヒロイン聡子の関係

松枝侯爵家の1人息子清顕と、綾倉伯爵家の娘聡子。

清顕は18歳の繊細な心を持つ青年、聡子は清顕の2歳年上の美しく優雅な令嬢です。

2人は清顕が子供のころ綾倉家に礼儀作法を学ぶために預けられた時から、幼馴染として姉弟のように親しくしていました。

聡子は清顕に恋心を抱いていましたが、清顕は聡子が自分を子ども扱いして見下しているのではないかと複雑な思いを抱いていました。

そのため清顕は聡子を嫌ってはいないのですが、冷たい態度を取っていました。

 

そんな中清顕の通う学校に、シャム国(現代のタイ)の王子が留学してくる事になりました。

王子は松枝家を訪れた時に、清顕には恋人はいないのかと尋ねます。

プライドが高い清顕は見栄を張って、聡子を恋人のように紹介します。

ここから2人の交際が始まりました。

 

聡子お付きの老女蓼科を通し、こっそり手紙のやり取りを続けます。

そしてある雪の日、聡子の両親が留守の間に2人きりで雪を見に行きます。

初めてキスをしてお互いの気持ちを確かめ合ったことで、清顕も素直に聡子を愛していきます。

 

その後も手紙のやり取りを続け、春には松枝家で花見の宴が開かれる事になり、聡子も招待されました。

しかし、2人は些細な事でケンカをしてしまいます。

清顕は聡子にプライドを傷つけられたことで、再び冷たい態度を取り始めます。

聡子の婚約と、それからの2人行動

花見の後、聡子に結婚の話が持ち上がります。

相手は皇族の息子です。

この頃綾倉家は経済的に苦しくなっており、皇族との結婚は願ってもいないチャンスでした。

松枝家は綾倉家に恩があり、清顕の父は聡子にふさわしい結婚相手を見つけて恩返ししようと考えていました。

そのため、2人の関係を知らない清顕の父も積極的に協力をしました。

 

聡子の結婚話はどんどん進んでいき、その間も清顕に何度も連絡がきますが、聡子からの電話も手紙もすべて断り、中身を見ることすらしません。

清顕に突き放された聡子は結婚を受け入れ、正式に婚約が決まります。

皇族と婚約した聡子は、将来は皇室の一員となる事が決まったため、手の届かない存在となりました。

しかし清顕はこの時、ようやく聡子に恋をしている事を確信します。

そしてこの恋を諦めるのではなく、蓼科を脅して聡子と密会を続けます。

また友人の本多に聡子との関係を説明し、協力してくれるように頼みます。

清顕の決意と生き生きとした様子に感動した本多は、2人の恋を応援することを約束します。

 

本多の協力も得られた事で、清顕は更に頻繁に聡子と会うようになりました。

しかし、こういった関係を続けた事で聡子が妊娠してしまいます。

蓼科は子供をおろすように助言しますが、聡子はなかなか結論を出しません。

その間も清顕からの連絡は続き、追い詰められた蓼科が自殺未遂を起こした事で、2人の関係は両家に知られてしまいます。

禁断の恋の行方

結局、子供は堕胎させられることに決まりました。

京都の伝統あるお寺、月修寺の尼さんが綾倉家の親戚のため、結婚前の挨拶をしに京都へ行くという口実で、聡子は東京を離れます。

そして大阪で堕胎手術を受けた後、月修寺を訪れた聡子は両親に知られる前に出家してしまいます。

 

聡子を諦めきれない清顕は、彼女を訪ねて月修寺へ行きますが中へ入れて貰えません。

雪の中、何度も月修寺を訪ねては追い返される内、清顕は肺炎にかかってしまいます。

それでも聡子に会いたい彼は、本多に連絡をして京都まで来てもらい、自分の代わりに面会の許可を貰ってくれるように頼みます。

友人の頼みを聞き、本多は月修寺の尼さんになんとか2人を会わせてあげて欲しいと頼みます。

しかし尼さんは、2人を会わせないのは聡子の気持ちでもなく、寺の者が意地悪をしているわけでもなく、仏の教えに従った結果なので諦めて欲しいと断ります。

 

清顕は仕方なく東京へ戻る事にしましたが、すでに病気は深刻な状態でした。

帰りの汽車の中、清顕は本多に向かって、また滝の下で会う夢を見たことを告げます。

そして帰宅した2日後、清顕は20歳の若さで亡くなりました。

「豊饒の海・春の雪」の解説と解釈

豊饒の海・春の海の解説と解釈を見ていきましょう。

豊饒の海・春の海のテーマ:禁断の恋

「豊饒の海」4部作全体のテーマは、夢と生まれ変わりです。

第1作目の春の雪には4部作全体の導入の役割もあります。

清顕が夢の内容を記録した日記が未来を予言しており、清顕が必ず生まれ変わると告げて死んだ事で、本多は次巻以降の主人公たちと深く関わる事になります。

そして春の雪で出家した聡子も、最終巻のラストに登場します。

このように、2作目以降に深く関わって来る出来事が散りばめられた作品でもあります。

 

春の雪のテーマは「禁断の恋」という分かりやすいものです。

しかしその展開は、唯識論という仏教の考えに基づいて書かれているようです。

主人公である清顕にはドラマチックに死ぬ事への願望があるようでした。

聡子が自分の手の届かないところへいってしまった時、はじめて恋心を確信します。

これは果たして本当に恋だったのでしょうか?

聡子と恋愛関係を続けていく事が自分の破滅へ繋がっていくと分かった時、清顕は人が変わったように恋愛に積極的になっていきます。

実は「禁断の恋」というものに対する憧れが、清顕に「聡子に恋している」のだと思わせていただけなのかもしれません。

心とは何か

あらゆる物事は、自分の心がそれをどのように感じているかによって見え方が変わる。

しかし心というものも本当にあるのか分からないという、唯識論の難しい考え方を知らなくても、清顕の行動や心情の移り変わりを見ていると、なんとなく分かる気がします。

このように豊饒の海は難しい考えに基づいて書かれていますが、それを上手く物語に取り込んでいます。

その中でも春の雪は、哲学的な考え方と物語としての面白さのバランスが非常によく取れています。

芥川龍之介がモデル

ところで豊饒の海は元々は全5巻の作品にするつもりだったそうです。

その第1作目は、若くして亡くなった天才の話として、芥川龍之介とその一家をモデルにしようと考えていました。

結局、豊饒の海は4部作となり、春の雪は明治末期の貴族の恋愛話となりました。

しかし清顕の人物像を見ると、芥川龍之介の影響を受けているように思います。

芥川龍之介は遺書に「僕の将来に対する唯ぼんやりした不安」が動機であると書いています。

それは毎日毎日同じことがくり返されて平凡に歳を取るくらいなら、いっそ死んだ方がマシだという意味で、ドラマチックな最期への憧れが彼を自殺に追い込んだのではないかと言われています。

清顕も、貴族の家に生まれて何不自由なく生活できるかわりに、周りに流されるままの退屈な生活に不満を感じており、漠然と華々しい死に対して憧れを抱いています。

三島由紀夫には若くして死んだ天才、芥川龍之介をリスペクトする気持ちがあったのでしょう。

そして三島が豊饒の海4部作を完成させた直後に自殺している事を考えると、芥川の最期にも憧れがあったのかもしれません。

豊饒の海を最後に三島由紀夫が死んだ理由

豊饒の海は、三島由紀夫が執筆に約6年の歳月を費やし「究極の小説」を目指して書いたものです。

彼はこの作品を書き上げた事で、作家として出来ることをすべてやり切ったと満足し、活動家として死ぬ事を選んだのではないでしょうか。

まとめ

・「豊饒の海 春の雪」ネタバレあらすじ

貴族の息子と娘の悲恋の物語です。

明治が終わり大正へと時代が変わっていく頃、優雅な貴族社会で悩みながら生きている若者が、恋を通して破滅へ向かって行きます。

・豊饒の海・春の海のテーマ:禁断の恋

春の雪のテーマは「禁断の恋」という分かりやすいものです。

しかしその展開は、唯識論という仏教の考えに基づいて書かれているようです。

・心とは何か

春の雪は、哲学的な考え方と物語としての面白さのバランスが非常によく取れています。

・芥川龍之介がモデル

若くして亡くなった天才の話として、芥川龍之介とその一家をモデルにしようと考えていました。

・豊饒の海を最後に三島由紀夫が死んだ理由

作家として出来ることをすべてやり切ったと満足し、活動家として死ぬ事を選んだのではないでしょうか。

 

いつもたくさんのコメントありがとうございます。他にも様々な情報がありましたら、またコメント欄に書いてくださるとうれしいです。

ABOUT ME
シゲゾウ
アラサーのエンタメ好き兄ちゃんデス。 教育関連の仕事に就いています。 エンターテイメントを肌で体感してあなたに新鮮な感動と興奮する情報をお届けします!!! やってみなきゃ分からない!をモットーに何にでも前のめりで挑戦していきます!!