ドイツで「ナチス非常事態宣言」がなされたとニュースになりました。
今回は、ナチス非常事態宣言とは何かわかりやすく解説するとともに、
なぜナチス非常事態宣言なのかの理由や今後どうなるのかについて紹介します。
ナチス非常事態宣言とは何かわかりやすく解説!
ナチス非常事態宣言とは何なのでしょうか?
できる限りわかりやすく解説していきます。
非常事態宣言とは何か?:政府が権限を持つ状態
非常事態宣言や緊急事態条項といった言葉があり、日本でも憲法を改正して文言を追加しようという話が挙がっていたりします。
それぞれの国にとって何か危機的な状況に陥ったときに、政府には普段は許可されていない行動や権限が与えられる状況のことを非常事態や緊急事態と言います。
緊急事態「条項」とは、どのような状況を指して緊急事態と呼ぶか、また具体的にどのような権限が与えられるのかを決めたルールのことです。
一般的には
- 大規模な災害
- 経済危機
- 武力紛争
- 感染症 など
が発生した際に非常事態を宣言されることが多いです。
国家にとって危機的状況に陥っているため、トラブルには迅速に対応する必要があります。
非常事態宣言で注目されるのは法律や条例関係です。
しかし法治国家が動こうとするには法律の範疇で行動する必要があり、いちいち新しい法律を作らなければなりません。
そのような手続きを踏んでいると対応が遅れてしまうため、本来は国会を通して承認されて法律ができるところを、政府だけで法律を作り発令することができるようになります。
他にも私たち国民の権利が一時的に非常事態を脱するために侵害されることになる場合があります。
ナチス非常事態宣言とは何か:人種差別主義の改善を求める
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2019年11月3日にAFPが報じたところによると、
ドイツの東部にあるドレスデンという都市で、2019年10月30日に市議会でナチス非常事態が宣言されたとのことです。
ドイツは第2次世界大戦時にアドルフ・ヒトラーが率いるナチ党(ナチス・ドイツ)の支配下にあり、自民族主義の考え方が支持されていました。
その中で、歴史の授業でも悪名高いユダヤ人迫害といった非常な行動がなされていました。
ナチス非常事態とは、多くの国で行われる非常事態では
- 大規模な災害
- 経済危機
- 武力紛争
- 感染症 など
といった出来事に対して非常事態が宣言されることが多い中で、ナチス・ドイツの負の歴史を強く刻み込んでいます。
間違った歴史を繰り返さないために、同じような自民族主義的ないき過ぎた行動が起こった場合にも非常事態を宣言できるようにしたものです。
ただし国が宣言する非常事態とは異なり、ナチス非常事態を宣言したドレスデン市議会が法律制定の権限を持つわけでもありません。
ナチス非常事態を市議会が宣言することで起こることは、
- 民主主義的な文化を高めること
- 少数派と人権、極右による暴力の犠牲者の保護を優先すること
- 反ユダヤ主義や人種差別主義、イスラム嫌悪の改善を求める
といったもので、
ざっくり言ってしまえば、市民や議会全体に対して「ナチスっぽくなってるかもしれませんよ、気をつけようね」というだけです。
今回のナチス非常事態宣言は市議会の賛成多数で可決されました。
賛成 | 反対 |
39票 | 29票 |
反対派も多く存在し、ナチス非常事態を宣言したことで世界的にもドイツ全土が評価を落としただけだと非難しています。
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なぜナチス非常事態宣言か理由や今後どうなるか?
なぜナチス非常事態宣言なのか、理由はなんでしょうか?
また今後の旅行などへの影響はどうなるのでしょうか?
なぜナチス非常事態宣言かの理由:ナチ党の支配への懸念
ナチス非常事態宣言とは、その名の通り一般的な非常事態宣言とは異なり「ナチス的」な状況に対する非常事態宣言です。
第2次世界大戦時に起こったナチ党(ナチス・ドイツ)による自民族主義や、それに伴う虐殺行為はナチ党という右翼政党が議会で大勢を占めたためです。
ドイツ東部にあるドレスデンという都市では、右翼過激派や人種差別主義者による活動が行われてきていたと地方議員は言います。
ナチス非常事態宣言には言葉としての意味しかなく、法的制限などが発生するわけではありません。
しかし世界的に、ドイツにはナチスっぽい世論が形成されつつあるというイメージを与える形になりました。
ドレスデンは2013年にPEGIDAというものが最初に誕生した都市でもあります。
PEGIDAとは、イスラム国の被害を逃れるために多くのイスラム教徒たちが難民としてヨーロッパに逃れてきたことで、ヨーロッパがイスラム化することをよく思わない人々の集まりです。
そのようなこともあり、ドレスデンを首都とするザクセン州では反移民感情が強く2019年の州選挙でも「ドイツのための選択肢(AfD)」という右翼政党が得票率27.5%を獲得しました。
今回、ドレスデンの市議会では賛成多数でナチス非常事態宣言が可決されましたが、反対票を投じた議員は決して少なくありません。
この背景には単純にナチス非常事態宣言が求めている
- 反ユダヤ主義や人種差別主義、イスラム嫌悪の改善を求める
だけでは済まされないイスラムの移民たちが起こす問題が影響しています。
ドイツニュースダイジェストによると、
移民とドイツ人とで中途退学率や失業率には次のような大きな差があります。
移民 | ドイツ人 | |
中途退学率 | 13.3% | 7% |
失業率 | 12.4% | 6.5% |
また、ドイツの公用語はドイツ語ですが、ドイツ語を話せる人はほとんどおらず教育を受けていないことなどから
- 就職できない
- 生活保護を受ける生活
といった状態にあります。
さらにはイスラム教や文化の違い・女性差別であったり、犯罪率の高さといった問題があります。
右翼政党が支持を受けることになる理由も決して分からないものではありません。
ナチス非常事態宣言で旅行や今後どうなるか?:特に影響はない
通常の非常事態宣言と異なり、ナチス非常事態宣言は言葉のパワーはものすごいですが、法的拘束力があるようなものではありません。
あくまで市民や議会に対して、差別的な指向があるため注意を促すといったものです。
旅行への影響もナチス非常事態宣言があったからという理由で危険度が増すということも、少なくとも今の段階ではありません。
外務省の海外安全ホームページでも、ドイツ全土が白色(危険度レベル0)です。
むしろ、イスラム国によるテロ行為の被害に遭うことを警戒した方が良いかもしれません。
The Guardianによると、2019年10月にもヘッセン州西部のリンブルふで盗まれた大型トラックが赤信号で停車する車に突っ込み8人を負傷させる事件がありました。
国家放送局によってオマールAIと名づけられたシリア人による犯行で、ドイツ当局はテロ目的と疑って捜査を進めていました。
犯人は麻薬や窃盗などの常習犯として前科がありました。
まとめ
・非常事態宣言とは何か?:政府が権限を持つ状態
それぞれの国にとって何か危機的な状況に陥ったときに、政府には普段は許可されていない行動や権限が与えられる状況のことを非常事態や緊急事態と言います。
・ナチス非常事態宣言とは何か:人種差別主義の改善を求める
ナチス非常事態を市議会が宣言することで起こることは、
- 民主主義的な文化を高めること
- 少数派と人権、極右による暴力の犠牲者の保護を優先すること
- 反ユダヤ主義や人種差別主義、イスラム嫌悪の改善を求める
といったものです。
・なぜナチス非常事態宣言かの理由:ナチ党の支配への懸念
ドレスデンを首都とするザクセン州では反移民感情が強く2019年の州選挙でも「ドイツのための選択肢(AfD)」という右翼政党が得票率27.5%を獲得しました。
・ナチス非常事態宣言で旅行や今後どうなるか?:特に影響はない
通常の非常事態宣言と異なり、ナチス非常事態宣言は言葉のパワーはものすごいですが、法的拘束力があるようなものではありません。
あくまで市民や議会に対して、差別的な指向があるため注意を促すといったものです。
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