スタジオジブリの人気アニメ映画「もののけ姫」に出てくる「たたらば」で暮らしている包帯を全身に巻き付けた人たち。
長きにわたりハンセン病患者なのではないか?という噂が流されていましたが、作者・宮崎駿自身がハンセン病患者として描いたということを告白しました。
今回はハンセン病をもののけ姫で宮崎駿が描いた理由や意味は何か?
映画「もののけ姫」の最後・ラストで「たたらば」で働くハンセン病患者は治ったのかについて解説していきます。
ハンセン病をもののけ姫で宮崎駿が描いた理由・意味は?
ハンセン病を映画「もののけ姫」で宮崎駿監督が描いた理由や意味はなんでしょうか?
ハンセン病とはどんな病気か?
ハンセン病は中学校の公民などでは「らい病」という言葉で出てくることがある病気です。
「らい菌」に感染することで起きる病気で、紀元前2400年のエジプトや日本書紀にも登場するほど、人間の歴史上ずっとつきまとってきました。
ハンセン病になった人の見た目に現れる異常や感染することへの恐怖から世界各地でハンセン病患者やその家族に対してさまざまな差別が国を挙げて行われてきました。
ハンセン病はほとんどの人が免疫をすでに持っており、もともと感染力の弱い病気で特効薬も開発されている完治する病気です。
ハンセン病の日本で行われた差別は?
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ハンセン病は人類史とともにある遺恨の深い病気です。
その症状が見た目にも表れ、たとえ完治したとしても後遺症として手や足、顔などに変形が表れてしまうことがあり、長きにわたり原因や治療法が確立されてこなかったために「感染する病気」という思い込みが強くありました。
20世紀に入り、ハンセン病の治療薬が発見されて治療法が確立されてもなお、「らい予防法」によって療養所に強制収容されるだけでなく、家族たちに差別被害がでないように偽名を無理やり名乗らされたりしました。
たとえ完治していても「遺伝する」という思い込みから堕胎や去勢・パイプカットを強制された人たちも多く、「ハンセン病問題に関する検証会議」によると、1949年から1996年までの間にハンセン病を理由に不妊手術をさせられた男女は1551人にのぼり、堕胎手術をさせられたのは7696件にもなります。
国が主導して「らい予防法」という隔離政策を主導するだけでなく、「無らい県運動」という周囲にハンセン病患者と思しき人がいたら告発することを奨励するキャンペーンまで行われ、差別を扇動してきました。
生きているだけで罪というとんでもない差別が国によって、また国民の無知によって平然と行われ続けてきました。
そうした状況のため、療養所に入所したハンセン病回復者は家族と絶縁状態となっているため、亡くなったあとの遺骨を取りに来る人もおらず、今なお遺骨は引き取り手がない状態にあり、ハンセン病の差別は何も解決していないことを証明しています。
ハンセン病患者がもののけ姫のエボシの部下として登場
ジブリのアニメ映画「もののけ姫」の重要な舞台の一つ、エボシが作った城塞施設・たたらばにはハンセン病患者が登場します。
映画「もののけ姫」の中でエボシが「私の秘密を見せよう」と言って、主人公・アシタカをハンセン病患者たちの住う住居へと案内します。
「ここは皆、恐れて近寄らぬ私の庭だ。秘密を知りたければ来なさい。」
とエボシは語ります。
長と呼ばれる目すらも布で覆われ横たわったままの老人はアシタカの腕の暴走に対して、
「どうかその人を殺さないでおくれ。
その人はわしらを人として扱って下さった、たった一人の人だ。
わしらの病を恐れず、わしの腐った肉を洗い布を巻いてくれる」
と話しています。
「長」の横に座る人も左腕が肘より先が欠落していることが分かります。
映画「もののけ姫」は室町時代ごろの時代設定で作られており、ハンセン病の治療法が確立するのは20世紀ごろということを踏まえると、当時は発症すると進行を止める術はない不治の病として恐れられていた頃だと言えます。
また原因も分かっておらず、ハンセン病患者の容姿の変形への恐怖や感染するかもしれないという恐怖から、徹底的に社会から排除されていた様子を映画「もののけ姫」にも反映させています。
ハンセン病をもののけ姫・たたらばで宮崎駿が描いた理由・意味
映画「もののけ姫」の制作にあたり、宮崎駿は東京都東村山市に実在する「多磨全生園」というハンセン病の療養所を訪れました。
宮崎駿は周辺に住んでおり、子供の送り迎えなどをする際に「多磨全生園」の前を通っていたため存在を認知していたものの、ハンセン病患者を目にした自分自身がどのような態度をとるのか分からなかったために避けていたと話しています。
ドラマなどでよくある時代劇には侍や百姓ばかりが登場します。
宮崎駿は映画「もののけ姫」が室町時代を描いており、いわゆる時代劇に該当するなら今まで描かれてこなかった時代劇の世界に住む隠されてきた側面も描かないと間違いではないか?と考えました。
宮崎駿は2016年に行った講演会において次のように話しています。
「『もののけ姫』を作りながら、ハッキリと業病といわれた病を患いながらちゃんと生きようとした人たちのことを描かなければいけないと思った」
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たたらばのハンセン病人はもののけ姫の最後で治ったのか?
映画「もののけ姫」に登場するハンセン病患者たちは最後・ラストで治ったのでしょうか?
たたらばのハンセン病患者はもののけ姫の最後・ラストで治った?
映画「もののけ姫」の最後・ラストで、シシ神の首をアシタカとサンが返したことで、腐敗していた森が緑に覆われていきました。
たたらばにいた人たちもドロドロに追われるように水の中に飛び込み避難をしていました。
トキの旦那・甲六は瞬く間に腐敗した森が緑に覆われていくさまを目の当たりにして
「シシ神は、はなさかジジイだったんだ・・・」
と呟きます。
その左にいる女性が驚きながら自分の手を眺めています。
アシタカの呪いも収まっていることから、ハンセン病も治癒されたと言えます。
ただし、エボシの失った腕はそのままであったことから、すでに失われたものはそのままで、冒されている部分から病を除去したと考えられます。
たたらばのハンセン病人がもののけ姫の最後・ラストで治った理由は?
映画「もののけ姫」に登場するハンセン病患者が映画の最後・ラストで治った理由はなんでしょうか?
あくまでハンセン病患者たちの存在はメインストーリーではなく、迫害されるハンセン病患者たちを労働力として利用できることを優先したエボシによって存在を認められていた人たちとして描いたに過ぎません。
考えられる理由は実際に療養所を訪問し、ハンセン病患者たちとの交遊を深めた宮崎駿なりに「映画の中でだけでも救われたハンセン病患者を描きたかった」のではないか。
事実に則すのであれば、ハンセン病患者をめぐる迫害はこれ以降も続き、昭和、平成には国を挙げた隔離政策・差別運動が行われることになります。
映画「もののけ姫」がハンセン病をメインとして描いた作品であれば、症状はそのままか治療法を確立してその他の人々との共存共生の社会に変わっていった様子を描いたでしょう。
しかし、あくまで登場人物としてリアルな時代劇の世界とするために登場させたハンセン病患者であることを踏まえると、根本的な解決はできない中でハンセン病患者の救いとしては跡形もなく完治したというのが落とし所と言えます。
千と千尋の神隠しにハンセン病は登場する?
千と千尋の神隠しにもハンセン病患者が登場するという噂がありますが、そのような事実は特に見られません。
隔離される病としては、隣のトトロや風立ちぬに出てくる「結核」があります。
まとめ
・ハンセン病とはどんな病気か?
ハンセン病は中学校の公民などでは「らい病」という言葉で出てくることがある病気です。
・ハンセン病の日本で行われた差別は?
20世紀に入り、ハンセン病の治療薬が発見されて治療法が確立されてもなお、「らい予防法」によって療養所に強制収容されるだけでなく、家族たちに差別被害がでないように偽名を無理やり名乗らされたりしました。
・ハンセン病患者がもののけ姫のエボシの部下として登場
ジブリのアニメ映画「もののけ姫」の重要な舞台の一つ、エボシが作った城塞施設・たたらばにはハンセン病患者が登場します。
・ハンセン病をもののけ姫・たたらばで宮崎駿が描いた理由・意味
宮崎駿は「『もののけ姫』を作りながら、ハッキリと業病といわれた病を患いながらちゃんと生きようとした人たちのことを描かなければいけないと思った」と言っています。
・たたらばのハンセン病患者はもののけ姫の最後・ラストで治った?
アシタカの呪いも収まっていることから、ハンセン病も治癒されたと言えます。
・たたらばのハンセン病人がもののけ姫の最後・ラストで治った理由は?
考えられる理由は実際に療養所を訪問し、ハンセン病患者たちとの交遊を深めた宮崎駿なりに「映画の中でだけでも救われたハンセン病患者を描きたかった」と言えます。
・千と千尋の神隠しにハンセン病は登場する?
千と千尋の神隠しにもハンセン病患者が登場するという噂がありますが、そのような事実は特に見られません。
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