映画「ミックス。」にはSHISHAMOが2曲のオリジナル楽曲を提供しています。
今回はその主題歌として使われているSHISHAMOの「ほら、笑ってる」について、その歌詞に込められた意味や制作の経緯について考察したいと思います。
主題歌「ほら、笑ってる」のMVは?
挿入歌として使われた「サボテン」にはMVが存在しませんが、主題歌の「ほら、笑ってる」にはMVが存在します。
ただし、このMVで歌われているものは完全版であり、映画「ミックス。」のエンドロールで流れる主題歌とは異なります。
主題歌のタイトルは「ほら、笑ってる(Movie.ver)」であり、後半部分の歌詞が一部省略されていることが特徴であります。
どういった意図で歌詞が一部短くカット省略されたのかについても考察してみたいと思います。
主題歌「ほら、笑ってる」の制作の経緯は?
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SHISHAMOにとって初の楽曲提供オリジナル曲であった主題歌「ほら、笑ってる」と挿入歌「サボテン」。
2曲とも映画の本編のテーマにそれぞれスポットを当てて制作された楽曲です。
主題歌「ほら、笑ってる」では「生きていても良いことばかりじゃなく、上手くいかないこともある」という作品全体を通して描かれているテーマにスポットを当てて作られています。
映画を観終わったみなさんがあたたかい気持ちになってもらえたらいいな、という思いを持って作られただけあって、はかなげでありながらも強さを感じさせる曲に仕上がっています。
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主題歌「ほら、笑ってる」の歌詞の意味は?
挿入歌「サボテン」はアップテンポで疾走感のあるメロディに乗せて、一見悲しげな歌詞が歌われた曲でした。
主題歌「ほら、笑ってる」は対をなすようにスローなテンポに時に刺さるような歌い方をしています。
大会で惜しくも優勝は逃すも、卓球クラブには多くの生徒が集まり、みんなが悩みを解決して生きていっている場面で終わった本編のあとに流れる主題歌にしては、気持ちを落ち着かせる曲に違和感を覚えます。
いったいどういう意味が歌詞に込められているのでしょうか?
主題歌「ほら、笑ってる」の曲構成
「ほら、笑ってる(Movie.ver)」も通常の「ほら、笑ってる」のどちらにも2番の歌詞というものは存在しません。
通常の「ほら、笑ってる」でも2番が存在しないことから、エンドロールの長さの都合で2番がなくなったという訳ではなく、もともと1番だけの歌詞で完結する物語になっているといえます。
主題歌「ほら、笑ってる」の歌詞に込められた意味を考察
空回ってつまずいて
(中略)
一人じゃないこと 知ってしまったから
Aメロです。
「空回ってつまずいて」という歌詞が挿入歌「サボテン」の歌詞を想起させます。
挿入歌「サボテン」の歌詞で描かれていた傷だらけになっていく自分というのはいつも一人で周りに笑われていたりしますが、そこが主題歌「ほら、笑ってる」では異なります。
走り続ける理由が「一人じゃないことを知ってしまったから」だと知っています。
一緒になってがんばって走り続けてくれる人がいるから、自分がやめてしまうことなんてできないんだ、支えあっていこうという前向きさが表れています。
頑張ったつもりなのに報われなかった自分を
恥ずかしく思ってた(中略)
みんなができることできなかったり
いつもどこかで間違える
Bメロが2ブロックあります。
1ブロック目では多満子(新垣結衣)の幼少期の母の鬼コーチのもとで必死に卓球をさせられていた自分についてです。
頑張っても結局は表彰台のトップに輝けない自分の不甲斐なさと母への申し訳なさを恥じています。
2ブロック目では母の死後、普通で平凡な人生を送ろうとしていた自分についてです。
本当は言いたいことがあるけれど、普通であろうとするあまりうまく言えない自分。
普通を演じようと頑張れば頑張るほど上手くいかない自分もやっぱり違うと分かっているもどかしい時期を表しています。
ほっといてくれない人がいて
(中略)
笑っていたくて 走っていたくて
Cメロです。
ここで語られる「ほっといてくれない人」とは萩原(瑛太)のこと以外にありえません。
愛し続けて陰ながら応援してくれていた父(小日向文世)もありえそうですが、この後の歌詞の「あなた」から連想するとラブソングでもあるため、ここは一緒に特訓をして切磋琢磨した萩原(瑛太)とみるべきです。
このCメロで思い出される風景は、元恋人の江島(瀬戸康史)に影でひどいことをいわれてショックを受けたあとに萩原(瑛太)が励ましてくれて海沿いを一緒に歩いたシーンや、気持ちを新たに2人で特訓に励んだ日々です。
そんな「ほっといてくれない人」のために「笑っていたくて走っていたい」だなんて、感情が溢れすぎています。
これは多満子(新垣結衣)から萩原(瑛太)へ向けたラブソングとも言えそうです。
奇跡なんて起きない
(中略)
でも 悲しくなんてないよ
小さな幸せ あなたと数える(中略)
そんなものよりキラキラしたもの
(中略)
ほら、空も笑ってる
サビです。
歌い方は儚く突き刺さるようですが、歌詞は希望に満ち溢れています。
卓球を通して人生における大切な真理として「奇跡が起きない」ことは理解している。
それで止まっているのではなく、「でも 悲しくなんてない」と言える強さと根拠を得たことがわかります。
誰に笑われたっていい、まだ優勝はできないとしても、着実に一歩ずつ積み上げてきた小さな幸せを大切に数えていこう。
特訓の日々やその後に乗り越えてきた全ての出来事が多満子(新垣結衣)の中にはキラキラしたものとして溢れています。
笑っている空は、流れからすると夜空かと思いますが、映画のラストの卓球クラブのシーンのように明るい未来の象徴としては晴れた青空のことでしょう。
フラワー卓球クラブ
別名 朝倉診療所いすみ市名熊公民館に行きました。
トッティーのお陰でガッキーの足跡がわかるという。
早朝アクアラインで渡り、7時からの勝浦朝市に絡めると良いかと。
絵に書いた長閑な田舎
今は田に水が張ってました。#新垣結衣#ミックス pic.twitter.com/QAYiqD6Ycy— HHH(3H) (@hhh100531) 2019年3月31日
ラストでは青空が広がっていますが、作中ではフラワー卓球クラブはいつもくもり空だったこともこの歌詞とつながります。
大サビはサビの歌詞がそのまま繰り返されます。
通常の「ほら、笑ってる」では、この大サビの前にDメロが入りますが、「ほら、笑ってる(Movie.ver)」では省略されています。
だけどそんな私、好きになれますように
この空に負けないくらい 笑っていよう
大サビのあとにはAメロに戻り、物語を閉じます。
出だしと同じかと思えば、3行目以降が異なります。
から回ってつまずいて傷つくことはこれからもあるだろう、でもそんな自分を好きになろうという前向きな気持ちです。
そういう風に思える理由はやはり、「ほっといてくれない人」がいてくれたからに他なりません。
そんな彼とこれからも走っていこう、笑っていよう、この空に負けないくらいに。
主題歌「ほら、笑ってる」で歌詞が省略された意味を考察
サビと大サビの間には通常の「ほら、笑ってる」では次の歌詞がDメロとして挿入されています。
もう痛くなんてないのに 痛いふりしてた
(中略)
私は弱くなんてない
みじめで情けなくて
MVで描かれている女の子にはこういった心情があったのでしょう。
しかし、多満子(新垣結衣)に関してはこれは当てはまりません。
挿入歌「サボテン」にあるように、多満子(新垣結衣)の場合は「失敗してもなんでもないふりをすることに慣れていた」のです。
主題歌「ほら、笑ってる(Movie.ver)」で描かれている多満子(新垣結衣)にとっての萩原(瑛太)へのラブソングとしては、似合っていないので省略されたけれど、多くの女性の心情としては多満子(新垣結衣)ほど強くは生きられないよねということでこのDメロが付加されているのでしょう。
まとめ
さて、映画「ミックス。」の主題歌「ほら、笑ってる」の歌詞に込められた意味についてと、通常の「ほら、笑ってる」との歌詞の違いについての考察をご紹介しましたがいかがでしょうか。
挿入歌「サボテン」とは違い、スローで儚い曲かと思えば歌詞を紐解いてみれば明るく前向きで、SHISHAMOが言う通りに映画を観終わったあとにあたたかい気持ちで勇気をもらえる曲に仕上がっていることが分かります。
ご拝読いただきありがとうございました。