壬申戸籍がまたネットオークションに出品されていたことがニュースとなり、法務局が引き取る事件になったとニュースになりました。
今回は「壬申戸籍」とは何か?
なぜ壬申戸籍がの閲覧は禁止されているのかわかりやすく解説するとともに、
ヤフオクなどに出品・流出した原因は何か?についても解説していきます。
壬申戸籍はなぜ閲覧禁止か理由をわかりやすく解説!
壬申戸籍とは何か?
また壬申戸籍はなぜ閲覧を禁止されているのか理由をわかりやすく解説しましょう。
まずは「壬申戸籍」という言葉の意味や由来から見ていきましょう。
壬申戸籍の由来や読み方・意味は?
壬申以外に同じような系統として「甲午農民戦争の甲午」や「辛亥革命の辛亥」などあります。
壬申戸籍(じんしんこせき)は1872年に戸籍法に基づいて作られた戸籍で、1872年が干支の「壬申(みずのえさる)」に当てはまることから、壬申戸籍と呼ばれています。
干支と聞くと十二支が思い浮かびますが、干支には十干と十二支の2種類があります。
十干(じっかん) | |||||||||
こう | おつ | へい | てい | ぼ | き | こう | しん | じん | き |
甲 | 乙 | 丙 | 丁 | 戊 | 己 | 庚 | 辛 | 壬 | 癸 |
ここに十二支の「子、丑、寅、卯、辰、巳、午、未、申、酉、戌、亥」を合わせて作られたものが干支です。(下の画像)
壬申戸籍の「壬申」は(じんしん)いがいに干支としては(みずのえさる)とも読みます。
壬申戸籍の壬申は戸籍を作成を始めた年を表す以上の意味は特にありません。
壬申戸籍とは何か目的をわかりやすく解説!
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壬申戸籍とは明治時代(明治5年、1872年)に戸籍に関する法律に従って作られたものです。
干支が「壬申」のときに作られたために壬申戸籍と呼ばれています。
今、私たちが役所に行って発行してもらう住民票と同じように名前や住所、生年月日なども描かれていますが、それだけでなく「身分」「犯罪歴」「信仰している宗教」なども書かれている点が大きな違いです。
私たちの住民票は、本人あるいは委任状などがあると本人以外でも発行することが可能になります。
壬申戸籍は申請すれば誰でも他人の個人情報を見ることができ、「犯罪歴の有無や身分の良し悪しを判断できるのはおかしい」ということで1968年に閲覧が禁止となり、法務局の職員などであっても閲覧することが禁止されており、完全に封印されています。
破棄されない理由は、一つの過ちの歴史として将来的に歴史資料としての価値が生まれるかもしれないためです。
壬申戸籍の戸籍法とは何?
壬申戸籍が作られるにあたり軸となったのが「戸籍法」という法律です。
戸籍の作成や手続きなどを定めた法律で、1871年の制定後も個人情報の扱いをめぐる問題が頻発し、何度も改正がなされてきました。
江戸時代までの戸籍は「寺請制度」といい、お寺が檀家ごとにまとめて管理している状態でした。
その後、幕府が「宗門人別改長(しゅうもんにんべつあらためちょう)」という戸籍や納税が書かれた帳簿の作成を各藩に命じます。
明治時代に入り、富国強兵の一環として国民の管理を徹底する必要が出てきました。
藩ごとに国民の管理をお願いしていた状態では、国としてどこにどれくらい人がいるのかがさっぱり掴めない状態でした。
また、江戸時代の帳簿をそのまま流用しようにも、倒幕をめぐる戦争などで脱藩などでぐちゃぐちゃな状態だったため、1872年(明治5年)に戸籍法に基づき壬申戸籍を作ることになります。
壬申戸籍の制度としての問題点は?
壬申戸籍の項目は次のようなものです。
- 本籍地で家・屋敷を単位として、一つの戸籍にまとめること
- 6年ごとに戸籍の見直しをして情報を更新すること
- 本籍、名前、年齢、続柄、職業を記入すること
- 出生、死去、転出の際は戸長(村長)に届け出て、戸長はすぐに戸籍に反映させること
- 華族、士族、平民という身分の表し方をすること
壬申戸籍は1872年(明治5年)から随時作成を進めるように言われていながら、同時に「できるだけ早急に」作るよう急かされてもいました。
そのため、壬申戸籍のデータには誤りや申告漏れが多く、特に出生、死去や転出のときに戸長に届け出るという仕組みは、文化として根付いていなかったため届出がなされず、正確さはあまりありませんでした。
壬申戸籍は役所で管理するのではなく、戸長と呼ばれる村長のような人が代表者となって管理することになっていました。
大抵の場合はただの有力者やその土地のお金持ちが戸長を担当します。
書く内容は決まっていましたがフォーマットはないため見た目の個人差が激しくめちゃくちゃでした。
そして壬申戸籍が閲覧禁止となった理由でもある身分や身分の差別的な表現が挙げられます。
壬申戸籍に書く内容は決まっていましたが、フォーマットはありませんでした。
そこで、戸長によって「詳しく書き込みたい」と思うポイントが異なり、中には職業や身分の項目に、江戸時代の職業や身分も書き足してしまう人がいました。
つまり、明治時代になり「えた・ひにん」という身分が廃止され「平民」に統合されてあえて区別がつかないようにしたにもかかわらず、「新平民」であったり「元えた・元ひにん」と書き加えてしまった戸長が大勢いました。
壬申戸籍はなぜ閲覧禁止の理由は?
壬申戸籍がなぜ閲覧禁止なのか、その理由は人権侵害につながるからです。
個人情報の扱いは特に気をつけなければならないと言われるようになってきた時代に、壬申戸籍は制度の欠陥から生まれた落ち度ではありますが身分に関するいき過ぎた記述がなされています。
ただの興味本位での閲覧も、その後の影響を考慮して一切許されていません。
実際に壬申戸籍の悪用など負の歴史が繰り返されてきたため、閲覧禁止の措置が取られ、今では法務局の管理者たちですら封印している事実があります。
1871年 | 解放令 |
1872年 | 壬申戸籍・戸籍法施行 (身分・職業・犯罪歴・信仰している宗教などの記入。新平民や元えたなどの差別表現も記載される) |
1923年 | 全国水平社第2回大会 (戸籍簿身元調査等の改正要求決議、帝国議会の因習打破に関する建議案策定) |
1976年 | 就職差別事件 (壬申戸籍を閲覧し、悪用) |
1968年 | 壬申戸籍の永久封印を決定 |
これ以降も住民票や戸籍をめぐる事件が相次ぎ、厳罰化や管理の厳格化がなされていきます。
特に結婚や就職にあたって、戸籍を用いた身辺調査が行われ続けたことから、解放同盟は「戸籍の自由閲覧を制限させる運動」を行っています。
壬申戸籍に「元えた・元ひにん」などと書かれている人数は限りなく少ないと言われています。
しかし逆に、そのごく一部の人たちは壬申戸籍を閲覧した誰かによってどのような迫害を受けることになるか計り知れません。
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壬申戸籍の記載例や土人・えたひにんとは?
壬申戸籍には具体的にどのように記載されていたのでしょうか?
土人やえたひにんの記載についても見ていきましょう。
壬申戸籍の記載例は?
壬申戸籍には内容は決められていますが、フォーマットは明確に存在しないためどのようなことが記載されているのか?は一概に言えません。
現代では壬申戸籍の文面を見たことがある人間は非常に少ないため、記載例として下の画像のような雰囲気だったと言われています。
身分に関する項目だけでなく、子供の扱いに関しても記載されていました。
隠し子であったり捨て子である場合には「私生児」「庶子」であったり、「棄児」という記載がされてきました。
さらに印鑑や持っている田畑の面積、牛や馬の頭数まで登録された戸籍もあったと言われています。
何を考えて戸長そこまで細かく個人情報を入れ込もうとおもったのかは定かではありませんが、国からの御達しに真摯に対応しようとした結果、見事にすべて悪い方向に進んでいったと考えられます。
壬申戸籍のアイヌの表記・旧土人とは?
戸籍法の施行によって、北海道に住むアイヌの人たちも「日本人」に編入されることになります。
そのときにアイヌの人々の身分表記として「旧土人」と書かれていました。
土人には「その土地に住む人」といった意味もありますが、この場合は「未開の地の原始人」といった差別的なニュアンスが多分に含まれた表現です。
壬申戸籍のえたひにん・新平民とは?
明治時代になり、「えた・ひにん」(賎民)という部類をなくすことになり平民に含まれることになりました。
しかし平民はそれまで「自分たちより下」という存在と同列に扱われることを嫌い、「新平民」と差別するようになりました。
あるいは江戸時代の身分を戸籍に書き加えて「元えた」「元ひにん」と記載されていたと言われています。
壬申戸籍の入手方法や一般人が見る方法は?
壬申戸籍を入手する方法はあるのでしょうか?
興味が湧いたために一般人である私たちが見る方法とはなんでしょうか?
壬申戸籍が欲しい人の入手方法は?
壬申戸籍に興味を持ち、欲しいと思った人もいるため、ヤフオクなどのネットオークションで出品された壬申戸籍を購入する例が後を絶たないと言えます。
個人が保管・所有していること自体が法律で裁かれることはありませんが、人権保護の観点からも法務局に渡すよう求められています。
現在、壬申戸籍が欲しいと思っている人が入手できるものではありません。
たとえ法務局の職員であっても封印されているため閲覧は不可能です。
壬申戸籍を一般人が見る方法や公開予定は?
壬申戸籍のほとんどは法務局が保管・封印しています。
学術研究目的であっても、その後の人権蹂躙の余地があるため一切公開を許可していません。
一般人が見る方法として可能性があるのは、あなたの家が昔の戸長の家系であり、今でも保管されているケースです。
ただし、その場合であってもネットオークションに出品された壬申戸籍を逐一法務局が動いて回収に当たっている状況から考えて、自発的に提出されること。
壬申戸籍ヤフオク出品・流出の原因は?
壬申戸籍がヤフオクに出品・流出した原因はなんでしょうか?
壬申戸籍ヤフオク出品・流出の経緯は?
壬申戸籍が閲覧禁止になってから50年以上が経過していますが、その扱いに関して無知で骨董品の一つとしてヤフオクなどのネットオークションに出品され、正体に気づいた人間が高音を出して買い取ろうとする例が何度も起きています。
2017年8月に東京都豊島区に住む人物がヤフオクに壬申戸籍を出品し、それに気付いた法務省が回収に当たりました。
2019年2月にも静岡県浜松市周辺の戸籍をまとめた文書がヤフオクに出品、13万3000円で落札され、法務省が落札者へ郵送される前に出品者から回収しました。
2019年5月5日に奈良県中西部の壬申戸籍と見られる文書が出品され真贋は不明ですが法務省が出品者の同意を得て落札前に回収。
2019年5月23日に埼玉県北部の壬申戸籍とみられる文書が出品され5月26日に落札されており、法務省は運営会社ヤフーを通じて回収を試みますが2019年7月12日の段階では落札者は法務省の要求に応じていません。
しかし法務省の回収に法的根拠がないため、応じなくても罰則はありません。
とはいえ、人権蹂躙を起こしかねない代物であるため法務省は対応に困っている状態です。
壬申戸籍ヤフオク出品・流出の原因は?
壬申戸籍はこれまでに何度もいろいろな地域のものが流通していたことがわかります。
その理由はすべてが法務局に保管されているわけではなく、いくらかは当時の戸長のもとにあり、基本的には市町村ごとに封印されていることになっていました。
しかしなんらかの理由で戸長から市町村の役所に提出されなかった分が流出していると考えられています。
あくまで可能性の話であり、出品者がどのような理由から壬申戸籍を手に入れたのかを特定することは難しいと言われています。
まとめ
・壬申戸籍の由来や読み方・意味は?
壬申戸籍(じんしんこせき)は1872年に戸籍法に基づいて作られた戸籍で、1872年が干支の「壬申(みずのえさる)」に当てはまることから、壬申戸籍と呼ばれています。
・壬申戸籍とは何か目的をわかりやすく
壬申戸籍とは明治時代(明治5年、1872年)に戸籍に関する法律に従って作られたものです。
・壬申戸籍の戸籍法とは何?
戸籍の作成や手続きなどを定めた法律で、1871年の制定後も個人情報の扱いをめぐる問題が頻発し、何度も改正がなされてきました。
・壬申戸籍の制度としての問題点は?
壬申戸籍のデータには誤りや申告漏れが多く、特に出生、死去や転出のときに戸長に届け出るという仕組みは、文化として根付いていなかったため届出がなされず、正確さはあまりありませんでした。
・壬申戸籍はなぜ閲覧禁止の理由は?
壬申戸籍がなぜ閲覧禁止なのか、その理由は人権侵害につながるからです。
・壬申戸籍の記載例は?
壬申戸籍には内容は決められていますが、フォーマットは明確に存在しないためどのようなことが記載されているのか?は一概に言えません。
・壬申戸籍のアイヌの表記・旧土人とは?
アイヌの人々の身分表記として「旧土人」と書かれていました。
・壬申戸籍のえたひにん・新平民とは?
平民はそれまで「自分たちより下」という存在と同列に扱われることを嫌い、「新平民」と差別するようになりました。
・壬申戸籍が欲しい人の入手方法は?
現在、壬申戸籍が欲しいと思っている人が入手できるものではありません。
・壬申戸籍を一般人が見る方法や公開予定は?
学術研究目的であっても、その後の人権蹂躙の余地があるため一切公開を許可していません。
・壬申戸籍ヤフオク出品・流出の原因は?
すべてが法務局に保管されているわけではなく、いくらかは当時の戸長のもとにあり、基本的には市町村ごとに封印されていることになっていますが、なんらかの理由で戸長から市町村の役所に提出されなかった分が流出していると考えられています。
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