IRの実現に向けて法整備が進められる中、中国・マカオなどで汚職が行われていたことが発覚しました。
今回は、IR汚職とは何か簡単にわかりやすく解説します。
また、IR汚職の経緯・時系列や秋元議員の逮捕の理由や賄賂についても紹介します。
IR汚職とは何か簡単にわかりやすく解説!
IR汚職とは何かをできる限りわかりやすく、簡単に解説します。
IRとは何か:本来はただのリゾート施設
そもそも、IRとは何かと言えばなんとなくカジノのことを指すように思っている方もいるでしょう。
実際のところ、この理解でそれほど問題はないです。
厳密には
Integrated | Resort |
統合された | リゾート・観光施設 |
IRはIntegrated Resortの略称で、統合型リゾートと言います。
その中身には
- 国際会議場
- 展示場
- ホテル
- ショッピングモール
- レストラン
- 映画館・劇場
- アミューズメントパーク
などを指します。
これだけ聞けば、どこにでもあるもののように感じるため、今更汚職が話題になるように感じられません。
重要なのは、こうしたリゾート施設の中にカジノも併設させようという計画があるということです。
IR汚職の意味を簡単にわかりやすく
すでに日本国内に存在する施設であれば、汚職・賄賂は行われにくかったり、バレにくかったりするでしょう。
パチンコなどはありますが、日本では賭博は公には禁止されており、カジノという施設や文化は存在しません。
すると、外国でカジノを有している国や地域(中国・マカオ、アメリカ、シンガポールなど)に行って、どの国のシステムを真似ればよいかを勉強することになります。
これはカジノを有している国や地域にとってもお金を稼げる機会です。
言ってしまえば、
「うちのカジノのシステムなら成功するしメリットも大きいよ。
アドバイスしてあげる代わりにお金ちょうだい!」
ということです。
すでに中国やアメリカなどは、カジノを含むIRを始めたい都市に自分のところのカジノ・IRがいかに優れているかを売り込みに来ています。
単純に売り込むだけなら良いのですが、ちょっとでも有利にしようとしてこっそりとお金を政治家などに配っていました。
これが発覚したのがIR汚職です。
IR汚職とは何かをもっと詳しく
さて、IR汚職とは何かをもう少し詳しく掘り下げて見ていきましょう。
日本の不況から脱出するため
そもそもカジノ・IRが話題になり始めた理由は、日本の経済強化のためです。
国の借金やアベノミクス、消費税率の10%引き上げなどが話題になっていますが、日本の経済は決して好ましい状況ではありません。
人口も減っていく中で、高齢者は増加し続けており社会保障費も増え続けています。
つまり日本はお金に困っています。
カジノなどの賭博は利用者が一攫千金を夢見て訪れる場所です。
しかし、カジノなどが潰れない理由は必ず利用者が損をする仕組みになっているからです。
国や地方自治体が先導して、利用者が損をする国営・公営のカジノを置くことには倫理的におかしいのではないか?という批判もありますが、そんなことを構っていられない状況にあるとも言えます。
また、一つの考え方としてパチンコなどの黙認されている賭博でギャンブル依存症の人が増えているくらいなら、国が認めた施設を作ってしっかりと管理をしようという前向きな見方もあります。
日本政府に対し誘致したい都市が売り込む
北海道や大阪など、日本国内の8つの都市がカジノを含むIRを始めたいと考えていました。
しかし、すべての都市がカジノ・IRを建設できるわけではなく、しばらくは3つの地域だけで行おうと決められていました。
ここで、日本政府に対して8つの都市が「うちならカジノ・IRを建設できますよ!」というプレゼンをすることになります。
カジノ・IR建設による経済効果は約5兆円で、年間2兆円の利益が見込まれているため、どこの都市も必死に売り込みます。
誘致したい都市を外国企業が操る
それと同時に、カジノを有する中国、アメリカ、シンガポールなどの企業は、それぞれの都市に「うちのカジノのシステムだと有利に誘致できるよ!」とさらに売り込みをかけます。
外国企業にとっても、カジノ・IRをはじめようとしている日本の状況は稼げる機会です。
他の国や企業に負けないように、必死に売り込みをかけていきます。
そんな中、北海道留寿都村はカジノ・IRを誘致しようとしており、そのバックには中国企業「500ドットコム」がついていました。
2019年4月に
- 中国企業「500ドットコム」
- 北海道留寿都村の関係者
- 内閣府副大臣・秋元司衆議院議員
が国土交通省・副大臣室で面会しました。
中国企業「500ドットコム」は秋元議員だけでなく、自民党や日本維新の会の国会議員ら5人に現金100万円を渡していたと公表しています。
このうち、日本維新の会・下地幹郎元郵政民営化担当相は2020年1月6日に会見を開き、この事実を認めています。
ちなみに北海道留寿都村のカジノ・IR誘致は2019年11月に北海道知事が再来年までの申請を断念することを表明したため、計画は中止となりました。
2019年12月25日に東京地検特捜部が秋元議員を中国企業から現金300万円などの賄賂を受け取ったとして、収賄の容疑で逮捕したことで、IR汚職が明らかになりました。
ただし秋元議員を含め、下地議員以外は現金の受け取りなどの事実はないと否定しています。
現職国会議員の逮捕
また、IR汚職と名前をつけて話題にもなった理由の一つは、現職の国会議員が逮捕されたということです。
国会議員には不逮捕特権というものが認められていることは、中学校の公民の授業などで聞いたことがあるかと思います。
不逮捕特権は例外もありますが、会期中の国会議員は逮捕されることがないというものです。
今回の秋元議員の逮捕は、会期中ではなかったため実現したものでもあります。
また、国会議員の逮捕は2010年1月・石川知裕以来で約10年ぶりでした。
さらには収賄容疑での逮捕は2002年6月・鈴木宗男以来でもありました。
IR汚職の経緯・時系列と秋元議員逮捕の理由や賄賂についても
IR汚職の経緯・時系列について、
秋元議員逮捕の理由や賄賂について見ていきましょう。
IR汚職の経緯・時系列
2019年12月25日に秋元議員が収賄の容疑で逮捕されたことで明るみになったIR汚職の経緯は、秋元議員が事実を否定していることもあり、はっきりしていません。
これまでのカジノ・IRをめぐる法整備などの流れから経緯・時系列を見ていきましょう。
年月 | 主な出来事 |
2002年12月 | 自民党内で「国際観光産業としてのカジノを考える議員連盟」結成 |
2004年6月 | 議員連盟、ゲーミング(カジノ)法基本構想案公表 |
2006年2月 | 自由民主党政務調査会内に「カジノ・エンターテイメント検討小委員会」設置 |
2006年6月 | 委員会「我が国におけるカジノ・エンターテイメント導入に向けての基本方針」策定 |
2008年6月 | 民主党政策調査会内に「民主党新時代娯楽産業健全育成プロジェクトチーム」設立 |
2009年9月 | 政権交代(自民党政権→民主党政権) |
2010年4月 | 超党派議員連盟「国際観光産業振興議員連盟」発足(共産・社民を除く) |
2011年8月 | 超党派議員連盟がカジノを中心としたIRの国内整備に向けた議員立法「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案(IR推進法案)」公表 |
2012年12月 | 政権交代(民主党政権→自民党政権) |
2013年6月 | 日本維新の会、衆議院にIR推進法案提出 |
2013年12月 | 臨時国会で自民・日本維新・生活の党がIR推進法案を共同提出、継続審議案件に |
2014年2月 | IR推進協議会、第1回設立準備委員会開催 |
2015年4月 | 自民・維新・次世代の党、衆議院にIR推進法案再提出 |
2016年11月 | 民主党内、IR整備推進法案の早期成立を目指す議員連盟発足 |
2016年12月 | 衆議院本会議、IR推進法案可決(自民・公明・日本維新が賛成) |
2016年12月 | 衆議院・参議院本会議、IR推進法案修正案可決・成立(自民・公明・日本維新などが賛成) |
2016年12月 | IR推進法施行、ギャンブル依存症対策を検討する関係閣僚会議開催 |
2017年3月 | 「特定複合観光施設区域整備推進本部」設置(本部長:安倍首相) |
2017年2〜8月 | 中国企業顧問と下地議員ら面会、金銭授受 |
2017年8月 | 「特定複合観光施設区域整備推進会議」議長、山内弘隆一橋大学商学部教授が首相に規制案等を盛り込んだ報告書提出 |
2017年10月 | 衆議院選挙 |
2018年4月 | IR実施法を案閣議決定(当面は施設の上限を3箇所、入場料を6000円とする) |
2018年6月 | 衆議院本会議、IR実施法案可決(自民・公明・日本維新が賛成) |
2018年7月 | 参議院本会議、IR実施法案可決・成立(自民・公明・日本維新が賛成) |
2019年1月 | 中国企業「500ドットコム」、北海道の誘致支援公表 |
2019年12月 | IR担当副大臣の秋元司衆院議員、中国企業からの収賄容疑で逮捕 |
IR汚職に関して、秋元議員は事実を否定していますが下地議員は認めています。
今後の展開としては、うやむやになって終わることが濃厚です。
その理由として、東京地検特捜部は逮捕しましたが収賄を認めさせることは事実上不可能です。
公の場で行われているのであれば証拠も出てくるでしょうが、密室で行われた場合には関係者が口を割るメリットはゼロであり、当事者からの供述に頼るしかないため、否定されればそれまでです。
中国企業側の被告はチップ代などを支払ったと供述しているため、音声・映像といった証拠があれば変わってくるでしょう。
IR汚職・秋元議員逮捕の理由や賄賂
IR汚職で秋元議員が逮捕された理由は、カジノ・IRを誘致しようとしていた北海道を支援していた中国企業「500ドットコム」から金銭などを受け取っていた疑いがあるためです。
秋元議員は事実を否定していますが、東京地検特捜部によると約760万円に及ぶ賄賂があったと言います。
- 講演料名目で中国企業「500ドットコム」が秋元議員へ200万円送金
- マカオ・カジノ視察旅行の航空運賃・ブランド品購入など約185万円を中国企業が負担
- 北海道への旅費、約76万円を中国企業などが負担
- 選挙中の陣中見舞いとして中国企業から300万円
秋元議員以外の中国企業から金銭を受け取ったとされている国会議員5人のうち、日本維新の会・下地幹郎衆院議員は100万円の受領を認めています。
ただし、どういった経緯だったのかは思い出せないと答えませんでした。
また、現金の意味についてはカジノ・IRのための賄賂ではなく、2017年の衆議院選挙前だったことを理由に「陣中見舞い」だったと話しています。
この他に金銭を受け取ったとされる議員は以下のように説明しています。
- 岩屋議員:受領した100万円は同僚議員からの謝礼
- 船橋議員:現金受領を否定する文書を公表
- 中村議員:200万円は中国企業から受け取ったものではないと否定
- 宮崎議員:不適切なことは一切ないと主張
秋元議員は有力政治家というほどの権力を有しているほどでもないため、氷山の一角に過ぎず、他にも金銭を受け取った議員がいるのではないかと指摘する声もあります。
IR汚職はアメリカが本命?
IR汚職を巡って中国企業だけが捜査の対象とされていることを疑問視する見方もあります。
カジノ・IRの誘致に対し、中国だけでなくシンガポールやアメリカの企業も積極的に参加しています。
それを裏付ける発言として、朝日新聞が秋元議員に行った取材で「中国企業なんて相手にしてないよ、こっちは。正直言って米国の企業の方がたくさん来てる」というものがあります。
IR汚職として取り沙汰されている秋元議員たちは、中国企業の金銭授受を「接待」と理解しているのだと考えられます。
本命はアメリカ企業であり、アメリカ企業こそがカジノ・IRに関する賄賂を送っている本丸だと見ることもできます。
まとめ
・IRとは何か:本来はただのリゾート施設
そもそも、IRとは何かと言えばなんとなくカジノのことを指すように思っている方もいるでしょう。
実際のところ、この理解でそれほど問題はないです。
・IR汚職の意味を簡単にわかりやすく
中国やアメリカなどは、カジノを含むIRを始めたい都市に自分のところのカジノ・IRがいかに優れているかを売り込みに来ています。
単純に売り込むだけなら良いのですが、ちょっとでも有利にしようとしてこっそりとお金を政治家などに配っていました。
・IR汚職とは何かをもっと詳しく
- 日本の不況から脱出するため
- 日本政府に対し誘致したい都市が売り込む
- 誘致したい都市を外国企業が操る
- 現職国会議員の逮捕
・IR汚職の経緯・時系列
2019年12月25日に秋元議員が収賄の容疑で逮捕されたことで明るみになったIR汚職の経緯は、秋元議員が事実を否定していることもあり、はっきりしていません。
・IR汚職・秋元議員逮捕の理由や賄賂
IR汚職で秋元議員が逮捕された理由は、カジノ・IRを誘致しようとしていた北海道を支援していた中国企業「500ドットコム」から金銭などを受け取っていた疑いがあるためです。
・IR汚職はアメリカが本命?
IR汚職を巡って中国企業だけが捜査の対象とされていることを疑問視する見方もあります。
いつもたくさんのコメントありがとうございます。他にも様々な情報がありましたら、またコメント欄に書いてくださるとうれしいです。
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