キリスト教にはさまざまな考え方や派があります。
今回はキリスト教原理主義や福音派とは何かをわかりやすく解説するとともに、
ユダヤ教やプロテスタントとの違いや関係についても整理して紹介していきます。
キリスト教原理主義や福音派をわかりやすく解説!
キリスト教原理主義や福音派とは何かをわかりやすく解説していきましょう。
キリスト教原理主義とは何か?
キリスト教の中に「原理主義」と言われる考え方があります。
原理主義をファンダメンタリズムとも呼びます。
原理主義と名がつくものは、キリスト教以外にも「イスラム原理主義」などがあり、「イスラム原理主義組織〜」といったフレーズはニュースなどでも聞き覚えがあるかもしれません。
言葉通り、キリスト教の教えの中でも原理を第一とする考え方の人たちを指します。
19世紀末〜20世紀初めごろにキリスト教原理主義はアメリカで誕生したと言われています。
キリスト教には近代主義と保守主義の2つに分けることができます。
2つの主な違いは進化論と聖書の扱いについてです。
キリスト教 | |
近代主義 | 保守主義(原理主義) |
進化論OK | 進化論NG |
聖書批判に寛容 | 聖書は絶対 |
進化論はダーウィンが提唱した「生物は進化しており、人間はサルから進化した存在だ」という考え方です。
キリスト教の教えでは、それぞれの生物は生まれながらにその姿で「進化」するのではありません。
これはアメリカでの教育とも大きく関わるポイントで、キリスト教信者の中でも保守主義(原理主義)の人たちは進化論を認めていないため、公立の学校で進化論を教えられることを嫌って子供を学校に行かせません。
そうした人たちが大勢いるため、アメリカではホームスクーリングという「学校に行かなくてもOKですよ」という制度が確立しています。
キリスト教原理主義が叫ばれた19世紀末〜20世紀初めごろにかけて、キリスト教内で近代主義か保守主義かで意見が分かれていました。
このキリスト教の保守主義の人たちを、キリスト教の聖書を大切にする人たちということで「キリスト教原理主義」と呼ぶようになりました。
福音派の特徴や意味は?
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キリスト教原理主義にも程度の違いがあり、どこまで原理を追求するのかによっていくつかの派閥に分かれていきます。
その中でもよく聞くのが「福音派」「エホバの証人」です。
福音派の特徴には
- 聖書に書かれていることはそのまま事実だという解釈
- 積極的に布教活動をする
- 神の教えに背いている自分自身の罪を認めて、信仰心をより厚くする体験
- キリストが背負った十字架は意義深いものだという考え
といったところが代表的なものとして挙げられます。
福音派は(Evangelical)となり、福音は(Evangelion)という言葉に直せます。
福音とは「良い知らせ」や「良い知らせを運ぶ者」といった意味があり、「聖書」そのものを指す言葉でもあります。
したがって、福音派とは特徴としてあげた「聖書に書かれていることは全てそのまま事実」と解釈しているところが重視されていると考えられます。
ちなみに、アメリカ以外では「福音派=プロテスタント」という意味が付けられているため、国によって福音派の指す意味に違いがあります。
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キリスト教原理主義とユダヤやプロテスタントの違いは?
キリスト教とユダヤ教の違い、
また、キリスト教原理主義とプロテスタントとの違いなどについて見ていきましょう。
ユダヤ教の旧約聖書とキリスト教の新約聖書の違いは?
ユダヤ教は旧約聖書、キリスト教は新約聖書という違いが一つの大きな違いと言えます。
キリスト教原理主義は聖書を重視しているため、聖書に注目することで違いが見えてきやすいでしょう。
キリスト教はユダヤ教から別れて生まれた宗教であり、ユダヤ教と同じく旧約聖書も持ちつつ、新約聖書も聖典として持っています。
旧約聖書は神と人間の間に結ばれた契約で、新約聖書は神とキリストが新しく結んだ契約と言えます。
キリスト教 | 罪を悔い、信仰と行動でキリストを受け入れ一人一人が救済される |
ユダヤ教 | 伝統、儀式、倫理的行動で神と対話することで個人と全ての民が救われる |
似ているようで神という捉え方とキリストという捉え方の違いや、救われるときの対応の仕方など違いがあることがわかります。
キリスト教原理主義とプロテスタントの関係や違いは?
キリスト教原理主義とプロテスタントの関係はアメリカにおけるキリスト教の分岐について触れることで理解を得られるでしょう。
プロテスタント | 福音派(キリスト教原理主義・保守) |
エキュメニカル派(リベラル・近代) |
プロテスタントの中でも枝分かれした保守主義と近代主義の、保守主義にあたるのが福音派であり、キリスト教原理主義と言えます。
ただしこれらは教会が異なるというわけではなく、一つの教会の中にも信仰の傾向として保守的か近代的かの違いがあるようです。
キリスト教原理主義と福音派の違いは?
キリスト教原理主義や福音派、ファンダメンタリズムといった言葉がありますが、同じ名前が別の意味を含んでいたりと少しややこしいので整理しましょう。
プロテスタントを2つに分けると「福音派」と「エキュメニカル派」に分かれるのですが、
アメリカの保守的プロテスタントは19世紀末〜20世紀初め頃に「ファンダメンタリズム(キリスト教原理主義)」と呼ばれていました。
その後、アメリカ北部の比較的穏健な保守派の人たちを「福音派」と呼び、過激な人たちを「ファンダメンタリズム(キリスト教原理主義)」と呼ぶようになります。
なので、便宜上は
ファンダメンタリズム | 福音派(穏健) |
キリスト教原理主義(過激) |
という分け方をしてしまっても良いでしょう。
なので、福音派とキリスト教原理主義の違いは、基本的には同じ特徴を持ちますが、その行動の過激さにあると言えます。
キリスト教原理主義が福音派よりもいかに過激かというと
- 女性蔑視、LGBT否認、離婚を認めない、堕胎禁止
- 他宗教の否定、上位者の間違いを否定してはいけない
のあたりが挙げられますが、ものによっては福音派であっても堕胎を禁止する教えをしていたりするため、あくまで個々人の信条の部分であるため厳密な線引きを福音派とキリスト教原理主義の間にすることは不可能と考えられます。
エホバの証人と福音派・キリスト教原理主義の関係や違いは?
キリスト教系の新宗教とされ、「ものみの塔聖書冊子協会」などがあります。
キリスト教の原則ともいえる一神教を否定しており、三位一体説やキリストの神格化を否定しているため、キリスト教ではないと考えられますが、人によってはファンダメンタリズムの「福音派」、「キリスト教原理主義」に続いて3つ目の選択肢として「エホバの証人」が含まれると言います。
エホバの証人の特徴として、
- 聖典は絶対
- 女性蔑視、LGBT否認、離婚を認めない、堕胎禁止
- 他宗教の否定、上位者の間違いを否定してはいけない
というものがあるため、キリスト教原理主義に通じる要素を持っていると言えなくもありません。
しかし、根本的な聖典としているものが新約聖書などではなく、独自に翻訳した「新世界訳聖書」というものなので、扱いはやはり異なると考えられます。
まとめ
・キリスト教原理主義とは何か?
19世紀末〜20世紀初めごろにキリスト教原理主義はアメリカで誕生したと言われています。
・福音派の特徴や意味は?
- 聖書に書かれていることはそのまま事実だという解釈
- 積極的に布教活動をする
- 神の教えに背いている自分自身の罪を認めて、信仰心をより厚くする体験
- キリストが背負った十字架は意義深いものだという考え
・ユダヤ教の旧約聖書とキリスト教の新約聖書の違いは?
キリスト教はユダヤ教から別れて生まれた宗教であり、ユダヤ教と同じく旧約聖書も持ちつつ、新約聖書も聖典として持っています。
・キリスト教原理主義とプロテスタントの関係や違いは?
プロテスタントの中でも枝分かれした保守主義と近代主義の、保守主義にあたるのが福音派であり、キリスト教原理主義と言えます。
・キリスト教原理主義と福音派の違いは?
アメリカ北部の比較的穏健な保守派の人たちを「福音派」と呼び、過激な人たちを「ファンダメンタリズム(キリスト教原理主義)」と呼ぶようになります。
・エホバの証人と福音派・キリスト教原理主義の関係や違いは?
根本的な聖典としているものが新約聖書などではなく、独自に翻訳した「新世界訳聖書」というものなので、扱いはやはり異なると考えられます。
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