香港での逃亡犯条例の改正に伴うデモが激化しており、警察が実弾を発砲したというニュースもありました。
今回は覆面禁止法とは何か、なぜ発令されるのかをできる限りわかりやすく解説します。
また、覆面禁止法とバットマンの悪役・ヴィランとして有名なジョーカーの映画公開に関係性があるのか、ヨーロッパやアメリカでの前例について紹介します。
覆面禁止法とは何か・なぜをわかりやすく解説!
覆面禁止法とは何か、なぜ覆面禁止法が制定されたのかをわかりやすく解説していきます。
覆面禁止法とは何かを分かりやすく解説
覆面禁止法は個人が公共の場で顔を隠すことを禁止する法律・刑法です。
中国・香港では2019年初頭から逃亡犯条例の改正をめぐって市民が抗議デモを続けていました。
香港政府が事実上の撤廃を宣言しましたが抗議デモは継続されていました。
抗議デモの参加者たちはトレードマークとして黒いTシャツを着用し、黒いマスクや仮面を着用していました。
また、警察官が鎮圧のために催涙弾を放つため、ゴーグルを着用している者もいました。
香港政府の保安局はそうした覆面によって個人を特定することが困難となり逮捕することができにくいこと。
覆面をしていることで抗議デモが過激になっている現状を打破するために覆面禁止法を制定しました。
香港政府は覆面禁止法の制定にあたり、「緊急状況規則条例(いわゆる緊急事態条項)」を発動して議会を通さずに2019年10月4日に制定しました。
2019年10月5日0時から施行されています。
覆面禁止法の内容:罰則や例外規定もアリ
覆面禁止法の内容は、
内容 | 無許可の集会やデモ活動に参加する際にマスクやゴーグルなどで顔を覆い個人を識別できないようにすることを禁止する。 |
罰則 | 2万5000香港ドル(約34万円) または 1年以下の禁固刑 |
対象外 | 医師など職業上の理由でマスクを着用しなければならない場合や、宗教上の理由や病気などの予防としてのマスクの着用は対象外になっています。 |
引用:Hong Kong mask ban has precedent in France – but not Europe as a whole
この他、警察がマスクを着用する必要がないと判断し、指示したにもかかわらず命令に従わない場合には誰であっても1万香港ドル(約14万円)または6ヶ月の禁固刑を科される可能性があります。
マスクのように身につけるものだけでなく、フェイスペイントも「顔を覆う」ものの対象に含まれています。
警察官がマスクを着用しているため、不平等だとして抗議する声もあがっています。
覆面禁止法はなぜ作られたか理由:抗議デモ参加者の特定と抑止
覆面禁止法が制定された理由は市民の抗議デモを鎮圧するためです。
香港政府に対する抗議デモにあたり、トレードマークとして黒いTシャツを着用し、黒いマスクや仮面を身につけている人たちが多くいます。
また、香港警察が市民たちに対し抗議デモ参加者だけでなく無差別に使用期限切れの催涙弾を放っていることもあり、ゴーグルを着用している者もいます。
香港警察はデモ参加者や、それと思われる一般市民を無差別に暴行し強制連行しています。
マスクや仮面、ゴーグルによって参加者の特定を困難にしているため、法律によって着用することを禁止しました。
2019年10月5日の施行の直前、10月1日には香港警察が至近距離から高校生に対して実弾を胸元に向けて発砲していました。
【20191001|人殺し・香港警察】
荃湾で警察が実弾を発射し、デモ隊男性の左胸が撃たれ、大量の血が出て、意識不明となった。 pic.twitter.com/zf6rO8Kn94— 香港反政府デモ情報館 (@HKnewsJP) October 1, 2019
今回の覆面禁止法に関して、香港市民たちの抗議デモを「暴徒」として扱い香港政府は犠牲者であるように報告していますが、警察は市民の見方ではない行動をし続けてきました。
かつてのウクライナの革命を例として、覆面禁止法によってさらに抗議デモは加速すると言われています。
覆面禁止法とジョーカーやヨーロッパ・アメリカでの前例はある?
覆面禁止法と映画「ジョーカー」の公開に関係性はあるのでしょうか?
ヨーロッパやアメリカで覆面禁止法が制定された前例はあるのでしょうか?
覆面禁止法とジョーカーの映画公開が関係する?:噂やアメリカの事例も
覆面禁止法の制定が2019年10月4日であり、同じ日に映画「ジョーカー」が公開されました。
ジョーカーとはバットマンの敵役・ヴィランであり、ピエロのような白塗りメイクに深く裂けた口元をしたキャラクターで、悪のカリスマとして人気の高いキャラクターでもあります。
かつて映画「ダークナイト」が公開されたときにも、アメリカ・コロラド州で銃乱射事件が発生し12名が死亡する大事件が起こりました。
そのためアメリカでは、今回の映画「ジョーカー」の公開にあたって同様の事件が起こるのではないかといった警戒がなされています。
香港政府が制定した覆面禁止法は、全く映画「ジョーカー」とは関係性のない出来事です。
むしろそのような映画に関連して警戒のために制定されるような状況に、今の香港はありません。
覆面禁止法のヨーロッパ・アメリカでの前例:罰則や理由はさまざま
覆面禁止法は私たち日本人にとっては、あまり聞き慣れない言葉です。
実はヨーロッパのいくつかの国々やアメリカでも制定されたことがあります。
ヨーロッパの覆面禁止法
ヨーロッパでは現在は廃止されたものも含めて、
オーストリア、ベルギー、ブルガリア、デンマーク、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、ラトビア、ノルウェー、スペイン、スウェーデンで覆面禁止法が制定された過去があります。
フランスの覆面禁止法
フランスで覆面禁止法が制定された過去があり、「イエローベスト運動」に対して導入されたものです。
このときフランスで制定された覆面禁止法では、1万5000ユーロ(約160万円)または1年の禁固刑が有罪判決の場合になされる可能性がありました。
ドイツの覆面禁止法
ドイツでも1980年代にデモ参加者のマスク着用を禁止する法律が制定されました。
ただし、違反者に対して禁固刑を科すものはなく、罰則金は300ユーロ以下に設定されていました。
ドイツでは警察は集団逮捕を行うのではなく、でもの解散をさせていたようです。
また、ヨーロッパではイスラム教徒が難民として流入しており、その中にはテロを起こす人たちもいます。
そうした人たちをあぶり出すためにもイスラム教徒の女性がベールを着用することを禁止する法律をオランダやドイツ、オーストリア、ブルガリアでは可決されたりしています。
アメリカの覆面禁止法
アメリカでは多くの州で覆面禁止法が制定されています。
多くの覆面禁止法は1900年代中頃に盛んに行われたKKK (クー・クルックス・クラン)の暴力活動を防止するために制定されました。
その後、2000年代には占拠や匿名で行われる政治デモに対して適用されています。
これに対して言論の自由や結社の自由といった憲法に違反するとして裁判所に異議が申し立てられています。
これに対して、ニューヨーク州などは現行法を支持しましたが、テネシー州やフロリダ州は違憲だと判断しました。
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まとめ
・覆面禁止法とは何かを分かりやすく解説
覆面禁止法は個人が公共の場で顔を隠すことを禁止する法律・刑法です。
・覆面禁止法の内容は?
内容 | 無許可の集会やデモ活動に参加する際にマスクやゴーグルなどで顔を覆い個人を識別できないようにすることを禁止する。 |
罰則 | 2万5000香港ドル(約34万円) または 1年以下の禁固刑 |
対象外 | 医師など職業上の理由でマスクを着用しなければならない場合や、宗教上の理由や病気などの予防としてのマスクの着用は対象外になっています。 |
・覆面禁止法はなぜ作られたか理由は?
覆面禁止法が制定された理由は市民の抗議デモを鎮圧するためです。
・覆面禁止法とジョーカーの映画公開が関係する?
香港政府が制定した覆面禁止法は、全く映画「ジョーカー」とは関係性のない出来事です。
・覆面禁止法のヨーロッパ・アメリカでの前例はある?
実はヨーロッパのいくつかの国々やアメリカでも制定されたことがあります。
いつもたくさんのコメントありがとうございます。他にも様々な情報がありましたら、またコメント欄に書いてくださるとうれしいです。
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