ヨーロッパの街並みを見ていく上で、その美しさを保つために統一感は一つの大きな要因でもあります。
しかし統一感がなくてもどこかに気品や誇りを感じさせる作りをしているのも事実であり、魅力であります。
今回はイギリスに古くから存在する「貴族・農民・市民」という3つの階級とそれぞれの家の違いや住宅の種類と共通点について紹介します。
イギリスの階級の種類「貴族・農民・市民」の違いは?
イギリスには古くから階級制度が確立されていました。
各国に社会階級というものは存在していますが、その中でも歴史が古いのがイギリスです。
どういった基準で階級が分けられているのでしょうか?
イギリスの階級・貴族の特徴と名称
イギリスの階級で貴族かそうでないかをわける目安には、その一族が持っている土地の広さが挙げられます。
持っている土地の広さによって、
「貴族>ジェントリー>スクワイアー」
という3つのカテゴリーに分けられます。
名称 | 土地の広さ |
貴族 | 1万エーカー以上 (東京ドーム865個分、東京都江東区ぐらいの広さ) |
ジェントリー | 3000エーカー以上 (東京ドーム265個分) |
スクワイアー | 1000エーカー以上 (東京ドーム80個分) |
1エーカーがだいたいサッカーグラウンド1つ分に相当します。
貴族が1万エーカー以上で東京都江東区ぐらいの広さということなので、貴族とは市長や区長のようなものと思ってもらえればイメージがつかみやすいかもしれません。
これら3つのグループをまとめてジェントルマンと呼びます。
ジェントルマンと聞くと、「紳士的で優しい」というイメージを抱きますが、単純に金持ちだと捉えたほうがいいでしょう。
今回は話のわかりやすさを優先して、これら3つをまとめて貴族として扱うことにします。
イギリスの階級・農民の特徴と名称
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農民は2つのグループに分けられます。
「ヨーマンリー」と「ペザントリー」です。
自分たちの一族の土地を持っているのか、そうでないのかがポイントになります。
名称 | 土地の有無 |
ヨーマンリー | 土地を持っている自作農 |
ペザントリー | 土地を持たない小作農 |
ペザントリーは完全に農民の扱いになりますが、ヨーマンリーは土地の広さがスクワイアーの基準である1000エーカーに満たなかったものも含まれています。
イギリスの階級・市民の特徴と名称
貴族や農民以外の職業のひとたちは市民に該当します。
市民には職業の内容によって「トレーズマン」、「プロフェッショナル」の2つに分けられ、トレーズマンの中でも金持ちの人たちを「ブルジョアジー」と呼びます。
名称 | 職業の内容 |
プロフェッショナル | 聖職者、役人、軍人、弁護士、医師 |
トレーズマン (莫大な富を得たものは「ブルジョアジー」と呼ばれる) |
商人、職人 |
18世紀までは「重商主義」と呼ばれる貿易などの他国との外交によって利益を得るというスタイルでした。
これが18世紀末の「産業革命」で国内での生産能力が格段に増えたことで、経費が削減されて「トレーズマン」の挙げられる利益が増します。
その結果として「トレーズマン」の一部は「ブルジョアジー」と呼ばれるようになりました。
また、18世紀末の産業革命以降には、「プロフェッショナル」に技師や芸術家なども加えられて、「中流階級」と呼ばれるグループになっていきます。
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イギリスの階級による家・住宅の違いと共通点
イギリスの階級は「貴族・農民・市民」の3つに分けられます。
それぞれに仕事の内容も違えば持っている土地の広さも違ってきます。
イギリスの階級制度の中でも、どの階級の家にも共通したものは何か?
また、それぞれの階級の家の名称と特徴について紹介していきましょう。
イギリスの家・住宅の共通点
イギリスの階級の違いがあるにも関わらず、「貴族・農民・市民」が持っている家にはある一つの共通点があります。
それはどの家も「ホール」を持っているということです。
家の大きさに違いはあっても、客を招き入れるための場所というものの存在は忘れられることがなかったといえます。
イギリスの貴族の家・住宅の種類
貴族は日本の歴史にも存在した「荘園」と呼ばれる領地が存在しました。
貴族はその荘園の中に自分たちの住まいを建てていました、それが「マナーハウス」です。
イギリス国内での内乱が落ち着いてきて、ロンドンが首都としての存在を確立していくと貴族は自分たちの領地と首都のロンドンを行き来することが増えてきます。
そこで首都のロンドンに別邸を用意します、これを「タウンハウス」と呼びます。
そして今まで「マナーハウス」と呼ばれていたものは「カントリーハウス」という名称に変更されます。
イギリスの階級・貴族の家「マナーハウス」
貴族が自分たちの領地である「荘園」の中に作らせていた城です。
「マナー」とは「荘園(manor)」のことを指します。
This photo of Harlaxton Manor is courtesy of TripAdvisor
イギリスの階級・貴族の家「タウンハウス」
王政が固まってきて、ロンドンが政治や経済の中心地として確立されてくると、貴族が首都・ロンドンにも邸宅を置くことにしました、それが「タウンハウス」です。
イギリスの階級・貴族の家「カントリーハウス」
ロンドンが首都としての機能を確立し、貴族が自分たちの領地である「荘園」に建てていた「マナーハウス」は、名称を「カントリーハウス」へと変えます。
そして、貴族の住んでいた「マナーハウス」が「カントリーハウス」へと名前を変えたあとには、貴族の中でも領地の少ない「ジェントリー」と「スクワイアー」が持つ家のことを「マナーハウス」と呼ぶようになります。
つまり
15世紀ごろからの貴族の家の名称 | |
貴族 | タウンハウス(ロンドンの別邸) |
カントリーハウス(荘園の本邸) | |
ジェントリー スクワイアー |
マナーハウス |
このようになります。
イギリスの農民の家・住宅の種類
イギリスの農民たちが住んでいた家は「ファームハウス」と「コテージ」の2種類です。
農民の名称 | 住んでいた家の名称 |
ヨーマンリー(自作農) | ファームハウス |
ペザントリー(小作農) | コテージ |
イギリスの階級・農民の家「ファームハウス」
「ファームハウス」には自分たちの土地を持っている自作農の「ヨーマンリー」が住んでいました。
家の大きさはやはり貴族のものとは圧倒的に差がありますが、住んでいる場所が首都・ロンドンというわけでもなく広大な土地があるため、ひかくてき大きめな家です。
イギリスの階級・農民の家「コテージ」
「コテージ」には自分たちの土地を持たない小作農の「ペザントリー」が住んでいました。
小作農は貴族の「荘園」の中に家を与えられている状態です。
イギリスの市民の家・住宅の種類
市民には商人や職人といった「トレーズマン」、聖職者や医師などの「プロフェッショナル」など多岐にわたり、住んでいた場所によっても家の大きさなどは異なり、一様に断じることは難しくなります。
首都・ロンドンのような場合は下の画像のような家に住んでいたことが一般的です。
イギリスの階級・市民の家「タウンハウス」
貴族の持っていた首都の別邸も「タウンハウス」と呼ばれていましたが、それとは意味が異なります。
こちらは市民たちが住んでいた集合住宅としての「タウンハウス」です。
イギリスの家の種類と住宅の規模・大きさの順番
イギリスの家の種類を大きさの順番に並べるとおおよそは次のようになります。
貴族が住んでいた「カントリーハウス」、ジェントリーやスクワイアーが住んでいた「マナーハウス」
農民が住んでいた「ファームハウス」、「コテージ」。
市民が住んでいた「タウンハウス」を大きさの順番に並べると、
カントリーハウス>マナーハウス>ファームハウス>コテージ>タウンハウス
という並びになります。
まとめ
・イギリスの階級・貴族の特徴と名称
名称 | 土地の広さ |
貴族 | 1万エーカー以上 (東京ドーム865個分、東京都江東区ぐらいの広さ) |
ジェントリー | 3000エーカー以上 (東京ドーム265個分) |
スクワイアー | 1000エーカー以上 (東京ドーム80個分) |
・イギリスの階級・農民の特徴と名称
名称 | 土地の有無 |
ヨーマンリー | 土地を持っている自作農 |
ペザントリー | 土地を持たない小作農 |
・イギリスの階級・市民の特徴と名称
名称 | 職業の内容 |
プロフェッショナル | 聖職者、役人、軍人、弁護士、医師 |
トレーズマン (莫大な富を得たものは「ブルジョアジー」と呼ばれる) |
商人、職人 |
・イギリスの家・住宅の共通点
イギリスの階級の違いがあるにも関わらず、「貴族・農民・市民」の家の共通点は「ホール」を持っているということです。
・イギリスの貴族の家・住宅の種類
15世紀ごろからの貴族の家の名称 | |
貴族 | タウンハウス(ロンドンの別邸) |
カントリーハウス(荘園の本邸) | |
ジェントリー スクワイアー |
マナーハウス |
・イギリスの農民の家・住宅の種類
農民の名称 | 住んでいた家の名称 |
ヨーマンリー(自作農) | ファームハウス |
ペザントリー(小作農) | コテージ |
・イギリスの市民の家・住宅の種類
貴族の持っていた首都の別邸も「タウンハウス」と呼ばれていましたが、それとは意味が異なります。
・イギリスの家の種類と住宅の規模・大きさの順番
イギリスの家の種類を大きさの順番に並べるとおおよそは次のようになります。
カントリーハウス>マナーハウス>ファームハウス>コテージ>タウンハウス
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