江戸川乱歩という作者名を知っていても、読んだことがある人は意外に少ないかもしれません。
今回は、江戸川乱歩の性格・特徴や人柄はどのようだったか?
作風や人気の理由について紹介します。
江戸川乱歩の性格・特徴や人柄・生涯
江戸川乱歩の性格・特徴や人柄、生涯について見ていきましょう。
江戸川乱歩の性格・特徴や人柄:ネガティブで熱中しやすい
江戸川乱歩は現代でも非常に人気のある作家です。
彼の小説を元に、映画、ドラマ、漫画、アニメと、幅広い作品が作られているので、文学にあまり興味のない方でも名前だけは聞いたことがあるのではないでしょうか。
名探偵コナンの主人公、江戸川コナンの名前の由来にもなっているくらいです。
そんな乱歩ですが、学生時代はいじめにより不登校気味で、学校には半分くらいしか行っておらず、図書室で本を読むのだけを楽しみに通学していたそうです。
その経験からかネガティブな性格に育ったようで、小説家になった後も自分の作品に自信が持てず、スランプに陥って休筆することが多かったようです。
彼のエッセイでは「31年間で17年は休筆していた」と書いています。
そのせいか人付き合いが苦手だったそうで、人間関係が嫌で仕事が長続きせず、小説家になる前は
- 貿易会社
- 古本屋
- ラーメン屋
- 造船所
と転職を繰り返していました。
生涯で46回も引っ越しをしていますし、とにかくあまり他人と関わりたくない性格だったのでしょう。
また、作品のアイデアを出すために色んなことを試していたらしく、ピアノを弾きながらアイデアを練る作家がいると聞き、自分は三味線でやってみようと練習をはじめたそうです。
しかし三味線に熱中してあまり原稿を書かなくなってしまい、結果的に三味線がめちゃくちゃ上手くなっただけだったという愉快なエピソードもあります。
1つの物事に夢中になってしまうタイプだったのかもしれません。
江戸川乱歩の生涯:人付き合いが作品に影響
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江戸川乱歩の本名は平井太郎と言います。
ペンネームは、海外の有名な推理作家エドガー・アラン・ポーにちなんで付けました。
1894年(明治27年)三重県名賀郡名張町(現在の三重県名張市)で生まれましたが、父の仕事の関係で子供の頃から引っ越しは多かったそうです。
転校も多くてなかなか友達も作りにくいでしょうから、学校や人付き合いが苦手な性格になったのも自然な流れだと思います。
また、小学生から翻訳された海外の推理小説や、SF小説、冒険小説などを好んで読んでいたそうです。
この経験が推理小説をメインにした作家になる事に繋がったようです。
大学卒業後は転職を繰り返していましたが、失業中に愛読していた雑誌「新青年」に短編小説の原稿を送り、これが採用されて1923年(大正12年)に小説家デビューします。
乱歩の作品には、様々な仕事に就いた経験を活かして書かれたものが多くあります。
デビュー作の「二錢銅貨」も、失業中のむなしい気持ちを、主人公の青年に重ねて書いたものだそうです。
身の回りの出来事からアイデアを得て、それを作品に取り込む事が上手い作家だったと言えます。
昭和に入ると戦争の影響により芸術作品も取り締まられるようになり、1937年(昭和12年)頃から推理小説は厳しく制限されました。
そして太平洋戦争が始まると、推理小説は書くことすら出来なくなってしまいます。
しかし、この戦時中の出来事が乱歩を大きく変えます。
仕事が無くてヒマだったため町内会の防災係を押し付けられ、嫌々ながらも近所付き合いが増えていきます。
そして空襲の際、近所の人たちが火事が広がらないよう一生懸命に防火活動をした事で、乱歩の家と土蔵が焼け残ります。
これにより人付き合いが苦手だった乱歩が、一転して人との関わりを大事にするようになりました。
その影響か、戦後は少年探偵団シリーズを再開し新しい作品を発表し続ける一方で、積極的に新人の発掘を行いました。
推理小説雑誌の編集長となり多くの作家が作品を発表できる場所を作ったり、江戸川乱歩賞を設立して公募で新しい作品を集めました。
晩年は様々な病気にかかり、パーキンソン病でペンを持つことも難しくなりましたが、それでも自分の口で語った言葉を家族に原稿用紙に書いてもらう方法で作品を作り続けました。
そして1965年(昭和40年)7月28日、クモ膜下出血により70歳で亡くなりました。
新しい作品を作り続ける事と新しい才能を発掘する事、その両方で日本の推理小説の発展に力を尽くした江戸川乱歩は、日本の文学界全体に貢献した偉大な作家だったと言えます。
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江戸川乱歩の作風
江戸川乱歩の作風にはどのような特徴があるのでしょうか?
推理小説の第一人者
江戸川乱歩と言えば、日本に推理小説というジャンルを広めた作家です。
それまでも海外の作品が翻訳され、日本の作家が推理小説を書く事もありましたが、推理小説というジャンルで作品を高く評価されて成功したのは乱歩が初めてです。
彼の作品はストーリーやトリック自体は単純なものが多く、「先の展開を想像し推理しながら読む面白さ」を誰もが楽しめるようになっています。
少年少女が推理と冒険で活躍し事件を解決する少年探偵団シリーズは、子供向け雑誌で連載されて大ヒットしました。
このように乱歩は、推理小説の面白い部分を上手く伝えることに成功し、子供から大人まで楽しめる作品を作りました。
怪しくも不穏で幻想的な世界
乱歩の作品は推理小説だけではありません。
怪しくて不穏で幻想的な世界を描くのがとても上手く、ホラーに近い作品も多く残しています。
「パノラマ島奇談」は、売れない作家が自分とそっくりの資産家になりすまし、自分が理想とする島を作るという話です。
夫が入れ替わっているのではないかと疑う資産家の妻と一緒に訪れたパノラマ島の光景は、グロテスクなのにとても美しく描かれており、それが余計に怖ろしく感じます。
変態的な要素とミステリアスな雰囲気
また「屋根裏の散歩者」では、犯罪に興味を持った青年が暗号文をベンチに置くような簡単な事から始まって、下宿の屋根裏から住人の生活を盗み見るような軽犯罪に夢中になり、最後は殺人を犯してしまうという、犯人の気持ちを書いています。
この不気味でミステリアスな雰囲気、特に、異常な性癖や特定の物への執着などの変態的な要素や、グロテスクな要素が多く盛り込まれた猟奇的な世界観こそ、乱歩の大きな特徴です。
「孤島の鬼」は恋人を殺された主人公が友人と共に事件の真相を突き止めようとする話ですが、乱歩の世界観が強く反映されており、他の作家の推理小説とは大きく違ったスリルを味わう事ができます。
江戸川乱歩作品の人気の理由
推理小説は今でも高い人気を集めていますが、江戸川乱歩作品の魅力や人気の理由はなんでしょうか?
江戸川乱歩は大正時代から昭和中期に活躍した作家です。
初期の作品は100年近く前に書かれており、現代ではあまり使わないような単語が出てくることもありますが、乱歩の作品はとても読みやすく感じます。
その理由は
- ストーリー展開、登場人物の掛け合い、文章自体、どれもテンポが良い
- 暗い話の中にも少しだけクスっと笑えるコミカルな要素がある
- 作品によっては語り口調で書かれており、面白い話を聞かされているように読める
などにあると思います。
文章のテンポの良さ
例えば、名探偵明智小五郎と女盗賊が対決する「黒蜥蜴」は、明智と女盗賊の頭脳戦とアクション、ドラマチックな展開が詰め込まれていますが、登場人物同士の会話が軽快で面白く、ストーリーもテンポよく進んでいくのでワクワクしながら読み進めることが出来ます。
コミカルな要素
そして乱歩作品の真の魅力は、恐ろしいのに目が離せなくなる、恐怖への誘惑にあると思います。
特に人間の狂気や欲望などの異常心理を、不気味だけど嫌な気持ちにならない絶妙なバランスで描くことができるのは、江戸川乱歩という作家の素晴らしい個性です。
「人間椅子」という短編小説は、作家の女性が自分宛てに送られてきた手紙を読むだけの内容ですが、美しい言葉で丁寧に書かれた不思議な手紙の内容に、背筋が凍るような恐ろしさがあります。
このように、現在も乱歩の作品が人気なのは、独特の世界観と誰でも読める気軽さを合わせ持っている事にあると思います。
文学作品は難しそうなイメージがあり、読むのが大変そうだと思われがちですが、乱歩の小説にそういった気構えは必要ありません。
少しでも興味を持った方は是非、時代を超えて愛される乱歩作品をチェックしてみて下さい。
まとめ
・江戸川乱歩の性格・人柄:ネガティブで熱中しやすい
学生時代はいじめにより不登校気味で、学校には半分くらいしか行っておらず、図書室で本を読むのだけを楽しみに通学していたそうです。
・江戸川乱歩の生涯:人付き合いが作品に影響
小学生から翻訳された海外の推理小説や、SF小説、冒険小説などを好んで読んでいたそうです。
・江戸川乱歩の作風:推理小説の第一人者
推理小説というジャンルで作品を高く評価されて成功したのは乱歩が初めてです。
・江戸川乱歩の人気の理由
- ストーリー展開、登場人物の掛け合い、文章自体、どれもテンポが良い
- 暗い話の中にも少しだけクスっと笑えるコミカルな要素がある
- 作品によっては語り口調で書かれており、面白い話を聞かされているように読める
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