世界に先駆けて1週間早く公開されて映画「名探偵ピカチュウ」。
今回は字幕版を鑑賞してきての率直な感想をお伝えいたします。
目次
映画「名探偵ピカチュウ」を字幕版で見る価値はあるのか?
ざっくりとした感想としては、字幕はひどいけれど吹き替えは評判がいいようなので吹き替え版をオススメします。
ポケモンたちの造形がリアルな感じだったり、序盤に出てくる大量のエイパムがちょっとしたトラウマものなので、対象としては子供向けというよりはポケモン赤・緑をプレイしたことのある30台あたりがターゲットです。
明日から実装される色違いエイパムってこれでしょ?#ポケモンGO#名探偵ピカチュウ pic.twitter.com/wK7qu2sWab
— コー@一応YouTuber (@komugi5659) 2019年5月7日
この表情と毛並みのエイパムが大量に主人公を追いかけ回すシーンはとにかく気持ち悪かったです。
見に行くだけの価値があるのか、ネット配信や地上波で見る程度で十分かといえば、鑑賞後に公式の名探偵ピカチュウの1/1サイズぬいぐるみを購入してしまった程度です。
ピカピカうるさいピカチュウには年齢的に合わないと思っている大人たちにとって、おっさんなピカチュウというのはドンピシャです。
さて、字幕版の映画「名探偵ピカチュウ」を鑑賞して残念に思ったところを3つ紹介したいと思います。
相変わらずひどい可哀想なミュウツー
ひとつはミュウツーのポジションです。
もともとミュウから遺伝子を組み換えて作られた人造ポケモンである以上、ミュウツーが自由に生きる世界というのはあり得ないのかもしれません。
今回のミュウツーもかつての映画「ミュウツーの逆襲」と同じく人間たちに利用されています。
ただし、「ミュウツーの逆襲」のときよりも全能感は増していて、どちらかと言えばこの世界の神のような存在として扱われています。
お涙頂戴な主人公のパートナーとして奮闘した名探偵ピカチュウが倒れてポケモンたちに助けを乞うシーンがあったりしますが、感動系を求めるなら「ミュウツーの逆襲」でいいんじゃない?と思いました。
また、ミュウツーの考えも時間の都合なのか破綻していて、「人間たちは悪だ」と言った数秒後に「いい人間がいることも分かった」と発言しており、心変わりが早すぎるだろと突っ込まずにはいられませんでした。
ライムシティの気持ち悪さがひどい
映画「名探偵ピカチュウ」の舞台となるのはライムシティという都市。
ここはポケモントレーナーがポケモンを使役するのではなく、人とポケモンが共生する社会として作り上げられた理想都市です。
そうは言っているものの、ビル群が立ち並ぶ街の作りはニューヨークの都市にポケモンたちがなんとか仕事を見つけて暮らしているようにしか見えません。
本当に人とポケモンが共生する社会というのなら、人間が見知った町並みというのはおかしいんじゃない?と思いました。
言葉が通じないなりに、ポケモンたちの意思を汲んで生活しようとするのなら、ポケモンたちにとってどのような街づくりが一番良いのかを一から考えてあるべきではないのかと。
なので、この理想都市ライムシティは最初から人間たちがポケモンと共生しているつもりになって満足しているという気持ち悪い街で、この印象は間違いではなく事件の黒幕も市長というひどいオチでした。
英訳がひどいので字幕版ではなく吹替版で見るべき
字幕版に関しては、その英訳のおかしさとしてツイッターにポケモンの英語名をそのまま直訳しているからおかしいみたいなデマが流されました。
実際にはそんなことはなく、ピカチュウもリザードンもゲッコウガも日本語版の名称の字幕がつけられています。
しかし、字幕版の英訳がおかしいので吹替版で見ることをオススメします。
西島秀俊のおっさんピカチュウがけっこう好評ですしね。
『名探偵ピカチュウ』吹き替え観た。西島秀俊さんの演技ががそこら辺にいる冴えないおっさんでありながらピカチュウの可愛らしさは健全という東京タワーの様なハードルを超えた自然さがあり、怒ったり猫被ったり、拗ねたりなどの様々な演技を巧みに使い分けていておっさんピカチュウ可愛いってなる pic.twitter.com/tuF01GLnnG
— 社畜のよーだ (@no_shachiku_no) 2019年5月3日
名探偵?刑事?Detectiveの字幕版の英訳がひどい
映画「名探偵ピカチュウ」の原題は「Pokemon : Detective Pikachuu」です。
ピカチュウがシャーロックホームズを思わせる帽子を着用しているところからも、日本語タイトルとしてDetevriveを「名探偵」と訳すことはおかしくありません。
しかし本作で使われるすべてのDetectiveという単語を「探偵」と訳しているためにおかしくなっています。
Detectiveには探偵(私立探偵)を表すPrivate Detectiveという意味合いと同時に、刑事を表すDetective Policeという意味もあります。
なので文脈で判断して「探偵」と訳すべきか「刑事」と訳すべきかを訳者が選択する必要があります。
今作の字幕ではこの選択作業があまりにもひどいです。
例えば主人公の父親の死亡事故に関する新聞記事のシーンです。
物語の始まりとなる主人公の父の死を新聞の紙面で読む主人公の描写、そこの英訳には「探偵が交通事故死」という見出しがつけられています。
残念ながら交通事故死に関して犠牲者の職業が探偵かどうか?ということに重きを置く紙面は明らかにおかしいです。
普通に「〜で謎の交通事故死」であったり「男性死亡」みたいな見出しが妥当です。
このあと警察署に呼ばれた主人公はヨシダ警部補(渡辺謙)から「君の父は立派な人だった」というセリフを言われます。
探偵と訳されているせいで、この発言の違和感に戸惑います。
警察から感謝されるような探偵と言えば、「名探偵コナンの毛利小五郎のように元刑事で退職して探偵を始めたってことか?」というように想像で補填せざるを得なくなります。
しかし事実は主人公の父は刑事(Detective Police)であり、本来は新聞の見出しとしては「警察官交通事故死」という文面が正しい英訳です。
これならば、その職業上の公民性からおかしくない見出しになります。
ピカチュウが主人公を字幕版で突然「坊主」と呼び始めるのがひどい
物語の後半、突然ピカチュウが主人公のことを「坊主」と呼び始めるところはものすごい違和感を感じさせます。
おそらくこの違和感はある程度伏線として貼られていたところでもあります。
名探偵ピカチュウが主人公と会話ができる理由がそもそも、ミュウツーによって父の人格がピカチュウの中に統合させられていたためなので、内なる父が露呈した描写といえます。
ここは日本語、日本の文化が英語圏とは異なるために生まれる気持ち悪さと言えます。
英語としては名探偵ピカチュウのセリフは「kid」であり、愛称として呼んでいることが分かります。
英語圏のみならず多くの国では、自分の子供や恋人を「Honey」や「Sweetheart 」といった一般化された愛称で呼ぶ文化を持っているので違和感はありません。
しかし日本人にはこういった文化はあまりありません。
それこそ「おい、坊主」と聞けば頭の中に浮かぶのはぶっきらぼうな態度の悪いおっさんでしょう。
いい代替となる表現がないので仕方なくもありますが、プロの仕事としてもう少し工夫した表現をして欲しかったですね。
まとめ
以上、映画「名探偵ピカチュウ」の感想と字幕版の英訳がひどいので、吹替版で見ることをオススメしたい理由でした。
吹替版と字幕版のどちらで見るべきか悩まれている方も多いでしょう、個人的には吹替版の方がストレスフリーで鑑賞できます。
相変わらずミュウツーの扱いは可哀想なぐらいにひどいです。
ライムシティがポケモンと人間の共生を謳っているわりには人間にとっての理想的な街並みが作られているところの違和感に注目です。
そして、字幕版の英訳がひどいです。
これもある意味魅力なので、あえて興味本位で字幕版で鑑賞されてもいいかもしれません。
ご拝読いただきありがとうございました。