ディズニーアニメとしても有名な「美女と野獣」が2017年にハリー・ポッターシリーズでハーマイオニーを演じたエマ・ワトソン主演で実写版として映画化されました。
日本でも大人気を博し、アナと雪の女王を凌ぐ記録を残しています。
今回は実写版「美女と野獣」の時代設定はいつなのか?
また18世紀のフランスの時代考証についても考察をご紹介したいと思います。
実写版「美女と野獣」時代設定はいつ?
「美女と野獣」は1740年にフランスのヴィルヌーブ夫人が記した作品で、1991年にディズニーが長編アニメーション映画として同名の「美女と野獣」と作りました。
実写版「美女と野獣」は、その1991年にディズニーが作ったアニメ映画「美女と野獣」をもとにリメイクした作品になっています。
1991年のアニメ映画では時代にそぐわない描写もありましたが、今回の実写版「美女と野獣」ではどうでしょうか?
実写版「美女と野獣」のあらすじは?
実写版「美女と野獣」は女好きで傲慢で嫌味な王子が偶然お城に現れた魔女に辛くあたってしまったがために呪いで野獣に姿を変えられてしまいます。
呪いを解くためには王子が真実の愛を知ることが条件になっており、召使いたちに助けられながらベルという女性を通じて、愛する心を知るまでを描いた作品です。
実写版「美女と野獣」の時代設定はいつ?
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実写版「美女と野獣」は1991年にディズニーがアニメ化したものをリメイクした作品ではありますが、原作小説に立ち戻って制作されています。
ヴィルヌーブ夫人が書いた原作小説は1740年(18世紀)に出版されており、全体的に18世紀中頃のフランスを舞台として描かれた作品になっています。
ちなみに映画の中で、ベルは17歳でガストンは36歳という設定になっています。
登場人物のドレス・服装
ベルやガストンたちが住むヴィルヌーブ村は田舎町なので、あまり感じられませんが、18世紀中頃の建築様式のロココ調が野獣の住むお城の扉などの装飾から伺えます。
ドレスや服装に関しても1750年代ごろに流行していた服装をしています。
ただし、18世紀初頭のものから末期のものまでかなり幅のあるドレスや服装が登場します。
たとえばエンドロールで流れるポット夫人の頭につけているヘッドドレスは1706年に使用が確認されています。
映画の序盤にヴィルヌーブ村でベルがロバに洗濯をさせている間に、女の子に勉強を教えるシーンで来ている裾の跳ねたジャケットは1778年ごろやそれ以降に流行したものです。
魔女に変身させられる前とラストシーンとで王子の容姿にそれほどの変化が見られないことから、王子が野獣に変身させられてから70年近くも経過したとは考えにくいです。
ドレスや服装に関しては「18世紀のフランス」という程度の縛りでファッションを構築することで、衣装の自由度を優先したと考えられます。
ペストについて
ベルの母がペストで亡くなったということが映画の中盤で明かされています。
フランスのパリに住んでいたベルや父・モーリスがペストにかかった母から離れるために田舎へとこしています。
フランスで起こったペストの流行として考えられるのは1720年の「マルセイユのペスト大流行」です。
この当時、ベルは小さい子供で記憶にあまり残っていないということは生まれて間もないか、遅くとも5歳ごろまでではないかと考えられます。
戦争について
映画の序盤でガストンが登場するときに、相棒のル・フウと戦争でのガストンの活躍ぶりについて話をしています。
1720年の「マルセイユのペスト大流行」以降に戦争が起こったと考えるとフランスが参戦し、ガストンが英雄となるほどの戦果をあげて勝利した戦争としては1740年から1748年まで行われたオーストリア継承戦争が考えられます。
ちなみにガストンが参戦した戦争としてはこれよりも後の1756年から1763年に行われた七年戦争を挙げる意見もあります。
ここで一つ問題となるのはいずれかの戦争を選んだときにペストの問題によって矛盾が起こります。
特に七年戦争を取った場合には1720年にたとえベルが0歳だったとしても40歳前後になってしまいます。
なのでペストか戦争のいずれかは史実にはない出来事だと考えるべきでしょう。
教育水準や識字率について
ガストンの参戦した戦争がオーストリア継承戦争であっても、七年戦争であってもおかしい点はヴィルヌーブ村の識字率や教育水準の低さです。
ベルが読書家な女性ということが変わり者、変人だと捉えられていますが、17世紀に始まり18世紀には大流行した「サロン」の存在を考えると、実写版「美女と野獣」の舞台となった時代設定はさらに古く16世紀から17世紀ごろと考えられます。
そしてヴィルヌーブ夫人が「美女と野獣」の小説を書き、出版できていることからも(もちろんヴィルヌーブ夫人は一般庶民ではなかったとはいえ)1740年の出版よりは確実に以前の時代設定だと言えます。
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実写版「美女と野獣」18世紀のフランスの時代考証は正しい?
実写版「美女と野獣」に登場するドレス・服装、ペストや戦争、教育水準や識字率から考えると時代設定は大ざっぱに決められたもので、厳密ではないと言えます。
ただし、1991年のアニメ映画「美女と野獣」のときよりはマシにはなっています。
エッフェル塔のシーンの削除
ベルが野獣の住む城でルミエールらによってもてなされるときに歌われた「ひとりぼっちの晩餐会(Be Our Guest)」は、1991年のアニメ映画「美女と野獣」ではエッフェル塔が登場し、時代考証はさらにめちゃくちゃでした。
エッフェル塔は1889年に作られた建造物です。
このあたりはディズニーらしい作品づくりの特徴で、史実に忠実に作ることよりも自分たちが思い描くステレオタイプな世界観を優先するところが反映されたものです。
黒人の夫人が登場
黒人の夫人が登場する点も史実とはそぐわないですが、このあたりは近年のハリウッド映画の差別問題対策としては仕方のないことと言えるでしょう。
アジア人も数名は入れなければならない、黒人も殺される役ではなく活躍する役を与えなければならない・・・などというしがらみです。
現代を描いた作品ならば構いませんが、過去を描いた作品では歴史的な背景を優先してもいいのではないかと思ってしまいます。
まとめ
・実写版「美女と野獣」時代設定はいつ?
ヴィルヌーブ夫人が書いた原作小説は1740年(18世紀)に出版されており、全体的に18世紀中頃のフランスを舞台として描かれた作品になっています。
しかし、細かく見ていくと矛盾だらけです。
・実写版「美女と野獣」18世紀のフランスの時代考証は正しい?
1991年のアニメ映画「美女と野獣」のときよりはマシにはなっていますが、相変わらず適当です。
いつもたくさんのコメントありがとうございます。他にも様々な情報がありましたら、またコメント欄に書いてくださるとうれしいです。